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「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル 1」 榎戸洋司
- 2009/02/20(Fri) -
「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル ①
“桐生冬芽”の場合。あるいは映画で青春を描くということ。」

マガジン・マガジン「小説JUNE」 99年7月号より
 
いま『少女革命ウテナ・アドゥレセンス黙示録』というアニメーション映画を作っている。

ベースになっているのは同タイトルのTVシリーズで、脚本家の僕は、一応、作業を終えて、完成を待ったりしてるわけだが……

先日、別のインタヴューで、アドゥレセンス黙示録が青春映画だと言うと、それはつまり青春について考える映画なのか、と訊かれた。
少し考えてから、僕は、そうではなく、これは青春的な価値観によって作られている映画だ、と答えた。

そう、この映画は、青春を描く。
僕たちスタッフは、今回の映画で青春を描こうとしている。

だがどうしてそんなものを描こうとするのだろう。

答えたあと、僕は一人でその理由について考察してみた。

思い返しても、青春なんてそんなに楽しいものではなかった。傷つかない場所へ必死に逃げようとしても痛々しいコミュニケーションとなってしまうのが青春だ。それはただ精神的生傷がたえないだけの季節だった。
経験値の低い不安と期待を抱え、いつもなにかに動揺しているだけの毎日だった。

でもなつかしく思ってしまう。
わざわざ映画になんかにしたくなってしまう。

やはりそこには、他にない快楽があるのだろう。
では他にない、どのような快楽が青春にはあるのだろうか?


「若い頃はなんにでも体当たりでぶつかれ」なんて言葉を聞くととても腹が立った。
それはすでに安全圏にいる大人のセリフだからだ。

そして僕自身、きっといまはかなりの精神的安全圏にいる。
(本当はぜんぜん安全じゃないのかもしれないが、安全であるかのように自分を偽るくらいの技は覚えたらしい)

だが、本当の意味での精神的安全圏に逃げ込んでしまったら、失ってしまうなにかが、やはりある。
だからきっと青春を描くことに価値があると思っているのだろう。


映画では、桐生冬芽という少年が物語上の重要なキャラクターの一人となる。
TVシリーズでも冬芽の少年時代には少し触れたが、今回はもう一歩踏み込んだ過去の一端が描かれる。

これまで直接描かなかった冬芽の傷。

少年の頃の彼は、友達である西園寺莢一や、妹の七実と、楽しい時を過ごす普通の子供だった。だが、両親に髪を長く伸ばすように命じられた頃から、自らの不幸な宿命を知ることになる。
両親は、冬芽を桐生家に売り飛ばしたのだ。もちろん建て前は養子だが、勘のいい冬芽はその意味をすぐに理解した。そして、妹を守るためにも、冬芽はそれを受け入れた。

売られた自分。実の息子を売ってまで冬芽の両親がなにを手に入れようとしたのかは、あえて描かない。それはまあひとつのメタファーと思ってほしい。そして冬芽は、新しい親が与える性的な虐待を黙って受け入れた。それを楽しんでみせるくらいの彼の器量が、人格の分裂を辛うじて防ぐが、当然、少年は変わった。

その変化はあまりにも内面の深い場所でおこったので、周囲の者は気付かなかった。西園寺や七実はその無邪気さゆえに気付けなかった。冬芽も自分の秘密を誰にも語らなかった。

人は失った分だけ、なにかを得るという。


ではそのとき、少年冬芽の得たものはなにか?
夜ごと弄ばれる冬芽が、昼間、無邪気な友達や妹を見て思うこと。

それは疎外感、である。

疎外されている自分。疎外されていく自分。

青春とは、自らが疎外されていく過程のことでもある。
(だが、本当は、疎外されていくのではなく、“もともと疎外されている自分に気付く”過程のことだ)

そして自らの疎外により自覚的なものこそ、より高い人間性と、自覚的なセクシャリティを獲得していくのだ。

TVの劇中、西園寺はいつも冬芽に一歩遅れていると感じていた。
才能ではおそらく互角だろうが、彼に足りなかったのは、まさにその疎外感である。


ウテナは、見ていて痛々しい、という感想をよくいただく。

それでいい。
きっと僕たちは痛々しい関係を描きたかったのだから。

それは、いま失いつつある“なにか”を、失うまいとする行為なのだろう。

年を重ねると、安全圏だけは確保できるかもしれない。そして共同体や友人との信頼は大切なものだ。
だがそれで、本質的な疎外感まで見失ってはいけない。
疎外感を覚えていてこそ、他者との関係の価値もあるのだから。

そんな想いから、きっと青春を描きたいんじゃないのかな、とか思うのです。



「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル ② “有栖川樹璃”の場合。あるいは革命の起こらない王国」
「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル 最終回 “鳳暁生”の場合。あるいは王子様の欠落」
 
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