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「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル 2」 榎戸洋司
- 2009/02/20(Fri) -
「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル ②
“有栖川樹璃”の場合。あるいは革命の起こらない王国」

マガジン・マガジン「小説JUNE」 99年8月号より
 
『少女革命ウテナ』は、デュエリストと呼ばれる少年少女の物語だ。

彼らは豊かな才能と美しい容貌を合わせ持つ選民であり模範生グループだが、自分一人で世界と対立していることがその条件である。前にも言ったように、疎外されていることへの自覚が重要な要素なのだ。

だが真の潔さを浮き彫りにして描くためにも、彼らはみな一点だけ、執着している未分化な関係が設定されている。心にひとつ大きな弱点を持っている。

その執着は多くの場合、“恋”として描かれる。

あなたが好き。あの人が好き。だって好きだから。どうしようもなく好き……。

純粋な恋は、愚かでありながらも、やはり美しい感情だ。

美しいものを描きたいと思っている。
描けるかどうかは別問題として (いや、ホントは全然別問題じゃないんだけど) 描きたいと思っている。

美しいものを生み出すのは世界を豊かにする。人を幸せにする。気持ちよくする。
だから、幻でもいいから、美しいものを描きたい。
幻でもいいから、美しいものを見たい。
あたりまえじゃん。

おっと、この原稿は映画『少女革命ウテナ・アドゥレセンス黙示録』の紹介が趣旨なのだった。
すぐに忘れる(笑)。


有栖川樹璃というデュエリストの少女がいる。
フェンシング部のキャプテンで、華やかな容姿の内側には凶暴な雌豹が潜んでいる。
登場人物の中でももっとも孤高なキャラクターだ。

だが彼女は、幼なじみの同性に恋をしている。
高槻枝織という同級生の少女を想ってる。

TVシリーズ放映中は、どうしてあの“樹璃様”が“枝織なんか”を好きになるのかわからない、とファンの方にはよくいわれた。執着する理由がわからない、と。

僕にも、本当のところはよくわからない。早く枝織なんかに見切りをつけて、別の恋を見つければいいのにとも思う。
でもそれは、樹璃にとっては余計なお世話なんだろう。

樹璃が枝織を好きになる具体的なエピソードや裏設定は、とくにない。
今回の映画でも描かれない。
彼女の性的な嗜好もあまり重要なことではない。

問題は、枝織が、樹璃の宇宙でどう捉えられているかということだ。

客観的な利害関係を越えた樹璃だけの価値観。
もちろん、それは思い込みでしかない。

だが恋愛に限らず、ほとんどの人間関係における感情は、思い込みでしかない。
そして、だからこそ、思い込みは大事だ。(いやほんとに)

他人の思い込みを制御できれば、その相手を支配さえできる。
自分の思い込みを自由にコントロールできれば、人生楽勝って感じである。

花が美しいのは、花それ自体が美しいのではなく、花が美しいと思うあなた自身の心が美しいのだ、みたいなことを誰かが言っている。

まったくその通りである。

幼い頃に見て感動した映画を、大きくなってから見直すと、子供騙しであったと気付くことはある。
しかし、心の中に美しさを残してくれたそれらは、嘘ではない。美しいイメージを喚起させてくれたそれらは、むしろ愛しい。実体を知ってなおときめく。

恋というのも、つまりそういうものではないだろうか。
やはり思い込みにすぎない。

だが、それを笑うことは誰にもできないはずだ。

あの時、あの場所であまりにも愚かだった恋を、しかし僕は誰にも笑われたくはない。


枝織は樹璃の思い込みを利用する。
樹璃を恋愛の対象とは思っていないが、自分の利益のためにそれをオプションとして使おうとする。

だが樹璃は、そんな枝織の本性を知らないわけではない。
知った上でなお、彼女への想いを断ち切ることができないのだ。

だが枝織は“樹璃ごとき”、いや“恋愛ごとき”で苦悩する自分の姿こそが魅力的であることにはまったく無自覚である。

だからこそ魅力的だ。
状況に縛られた若者は美しい。


枝織が樹璃の想いにこたえることはない。
今回の映画における最大の闇である高槻枝織は、けして革命の起こらない王国である。

もしかしたら樹璃が彼女にひかれるのは、その闇ゆえなのかもなあ……。

けれど革命を待つ王国はある。

次回は(たぶん)そのクライマックスについて。



「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル ① “桐生冬芽”の場合。あるいは映画で青春を描くということ。」
「『少女革命ウテナ』 プライヴァシー・ファイル 最終回 “鳳暁生”の場合。あるいは王子様の欠落」
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