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「二人のウテナ」 小黒祐一郎
- 2013/08/10(Sat) -
DVD「少女革命ウテナ L'Apocalypse 5」ライナーノーツより
姫宮アンシーは『少女革命ウテナ』の企画の途中で生まれたキャラクターである。

企画の最初、ウテナは「どんな困難にもくじけない強さを持った人物」であり、それと同時に「快楽主義者で、色々な男性と愛し合い、それぞれの子供を産んでしまうような大陸的な大きさを持った女性」と考えられていた。
そんなウテナが男装の戦士となり、何人もの素敵な男性達と恋愛していくというのが、企画初期での『少女革命ウテナ』のイメージだった。
キャラクターデザインのさいとうちほ先生の作品にインスパイアされ、宝塚歌劇の世界を意識した内容だった。

「どんな困難にもくじけない強さ」と「快楽主義者であり……」の、二つの傾向がウテナに込められるはずだったが、幾原監督は企画作業の途中でそれを一人の人格にまとめることはできないと判断し、その結果、もう一人の主人公のアンシーが生まれる事になった。
二つの傾向の前者がウテナに、後者がアンシーに与えられたというわけだ。

アンシーが生まれるのと同時に、この企画を「この二人の少女の関係性」の物語にしたいと幾原監督は提案した。
自由奔放に色々な男性と恋愛し、関係してしまう女の子と、それを嫌だと思う女の子の、二人の関係を描きたいという事だった。
勿論、この段階では「薔薇の花嫁」の設定は、まだ考えられていなかった。

やがて企画は一段落して、物語作りが本格的に始まった。
実際の物語では、ウテナは「どんな困難にも負けない強さ」を持っているのかもしれないが、普段はそんな強さをあまり見せぬノンビリとしたキャラクターとなったし、アンシーは「薔薇の花嫁」となった。

「薔薇の花嫁」としてのアンシーは、最初に考えられていた「快楽主義者であり……」とは逆の存在なのだろうか。
いや実はそうではなく、同じ「女性」というものを違う角度から描いただけなのだろう。
「女性ならではの快楽主義者」がポジだとすると、そのネガが「薔薇の花嫁」なのだ。

「どんな困難にもくじけない強さ」と「快楽主義」。
最初は一人の人間に込められるはずだったこの二つの傾向は、『少女革命ウテナ』の物語の中で、そのままウテナとアンシーの対立となって残っている。
すなわち、「薔薇の花嫁」であり続けようとするアンシーと、それを否定しようとするウテナである。
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