スポンサーサイト
- --/--/--(--) -
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事のURL | スポンサー広告 | ▲ top
「光さす庭・エチュード」 榎戸洋司
- 2007/03/31(Sat) -
LD「少女革命ウテナ L'Apocalypse 2」封入特典・解説書より

──それで、今回のシナリオの意図するところは?
──結局、なにを描きたいの?
やだなあ、そんなこときかないでよ。照れるじゃない



いずれは知らずに抜け出る檻かもしれない。
けれど、ふとしたきっかけで、その“迷路”の存在を自覚する瞬間がある。
進むべき道を見失い、迷っている自分に気付くときがある。

たとえば、ふと訪れた古い建物の天窓から差し込む光を見たとき。あるいは夏の夕闇の林でひぐらしの声をきいたとき。
なつかしい、という言葉だけでは表せない切ない想いを全身で感じる時がある。

そうそう、こういう感覚があった。こういうのいいよね……。
タイムマシンで過去にもどりたいと思うわけではないが、過去の快楽をもう一度味わいたい、追体験したいという願い。──いや、ちがうな。ここで言いたいのは、そう願う瞬間があるということではなく、そうした過去の時間に対する追体験願望が人には基本的に偏在しているという事実。その事実に気付く瞬間があるということだ。

恋愛観とか未来の理想なども、先天的な遺伝子情報とは別の要因として、そうした“追体験願望”に多くを根差しているのではないだろうか。
それを後天的動機と言うか昔の万能感への欲求と呼ぶか、あるいはもっと単純に感傷という言葉で片付けるかはさておきとにかくその“追体験願望”が、まるで重力のように自身の心にあるのを思い知るときがある。

「妹の音色と同じだ」幹は思わずつぶやく。「あの、光さす庭だ……見つけた、輝くものを」
そして、それは危険なものであると直感する。


もちろん、感傷がいけないわけではない。感傷もまた利用しうる、すべき道具ではある。
けれど、人は基本的に未来へ生きるものであるから、感傷に支配されると流れる勢いを失い、澱んでしまう。
“迷路”と呼ぶのは、そういう理由からだ。

ところで、迷路は成長と死の象徴である。
人が心に傷を負ったとき、よく旅に出るのは、装置としての迷路である。
心の迷路には形がないので、感覚的に把握しにくい。
そこで、フィジカルな距離やコースを迷い、傷がなおればゴール、という目に見える迷路とシンクロさせて問題を“解決”するわけだ。

だが、迷路のゴールにたどりつくとき、彼はもはやもとの彼ではない。
成長は“それまでの自分の死”である。

人生という迷路にもまた形はない。
“創作する”という僕たちの“生き方”は、つまり目に見えないものをわかりやすく様式化することなのかもしれない。


──それで、今回のシナリオの意図するところは?
──結局、なにを描きたいの?



「どうして誰も、僕の輝くものになってくれないんだ」
という幹の嘆き。

薫幹の“輝くもの”とは、もちろん追体験願望の記号である。

丘の上の白い家とか、隣の緑の芝生、そして空中の城。追体験願望に限らず、“あっち側の幸せ”というモチーフは、この『少女革命ウテナ』には繰り返しよく登場する。なぜか幸せそのものの“サンプル”を描くことはほとんどない。
タイトルのウテナにしても、花そのものではなく、花を支える台のことだ。


輝くもの。過去の時間に対する追体験願望。
でも、それを否定したいのではない。(すべてを否定するには、あの光さす庭は美しすぎる)
でも、ただ飾りたいのでもない。(感傷に支配されているだけでは、その“美しさを感じる心”すら維持できない)

結果的には、『光さす庭』という物語が内包する主題の存在を軽く呈示しただけで、今回の話は、いつか描くべき物語の習作でしかなかったのかもしれない。


過去への感傷に支配されながらも、それを自覚し、やがてはそうした感情も道具として使いこなしていくよう成長する姿。そしてそういう仕組みになっているこの世界の理(ことわり)。僕はきっとそれを描きたいのだ。描くべきだと思っているのだ。

僕たちが世界に愛されていることを。まだ世界を愛せることを。

結局、シナリオという形式を使って描くべきは、ラブレターだと思っているから。(いや、あらゆる創作物はラブレターであるべきだと思うから)

そして、ラブレターにとって“いちばん大事なの”は表現ではないから、テクニカルな部分だけを競う愚はけして犯すまい、と思っているのです。(豊かさは技術だけでは生まれてこないんだ。情熱だよ、情熱!)

完成してないことが君の強さなんだ、とは誰も言ってくれないけど(笑)。

スポンサーサイト
この記事のURL | テキスト | TB(0) | ▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://kasira.blog97.fc2.com/tb.php/22-7192991d
| メイン |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。