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「才能は走る」 幾原邦彦×藤島康介対談
- 2007/04/11(Wed) -
幾原邦彦(監督) VS 藤島康介(漫画家)
徳間書店「アニメージュ」 97年9月号より

――藤島さんは『少女革命ウテナ』を1話から御覧になっているんですか。

藤島:それがですね、1話は見損なっちゃったんですよ。で、2話を見たときに「しまった。何で1話を見てなかったんだろう!」と思いまして、アシスタントに1話のビデオをダビングしてもらいました。それからは毎週、録画してますよ。

幾原:そうですか。ありがとうございます。昨日放映したやつ(16話「幸せのカウベル」)は、どうでした?

藤島:衝撃を受けました(笑)。

幾原:アレは自分でも気に入ってるんですよ。おかしいんだか、悲しいんだかわからない感じというか。作品の肌触りに関して異質な感じというか、見たことない感じになればいいなあと思ってやったんですよ。

藤島:いやあ、気持ち悪さ満点でしたよ(笑)。いい意味で。

幾原:あの話に限らず、スタッフには視聴者を置いていってるって、怒られるんですけどね。

藤島:いいんじゃないですか(笑)。もう、ここまで来ちゃって、普通に戻す必要もないし。

幾原:ええ、だから、最近は居直っちゃってますけど。

藤島:もっとアヤしくなればいいなと思います。第2部になってから、アヤしさ倍増ですね。

幾原:そう言われるとちょっとホッとしますね。第2部の「黒薔薇編」は作っていて、すごく不安だったんですよ。手探りでやっていて。

藤島:どこまでやっていいのか、とか、そういうことですか。

幾原:いや、もう視聴者の人が面白いと思うかどうかは、もはや僕はあまり気にしてないです(笑)。むしろ、やろうとしている事を、上手く見せられてるのかなと思って。

藤島:上手くやれていると思いますよ。「アニメで舞台劇をやりかったのかな?」と思ったんですけど。そんなことないんですか?
幾原:あんまり、舞台的だって事に、こだわっているわけじゃないんですよ。それに、今までに参加した作品でも、ああいうことをやろうとはしてたんです。だけど、今までの作品だと、周りのスタッフに止められていたんですよ。「やめてくれ!」って。

一同:(笑)。

藤島:『ウテナ』には毎週、意表をつかれています。

――意表をつかれるというと、具体的にはどのへんですか。

藤島:そうですね。例えば、1話から主人公が戦うテーマを持たないまま、戦っていることとか。

幾原:それはそうですよね。だけどね、自分で言うのも何なんだけど、1話と2話は、普通のお客さんに随分サービスしたつもりだったんですよ。

藤島:そうなんですか。

幾原:1話や2話に関しては、まだ辛うじてウテナが戦う理由を描いているんです。友達が侮辱されたから、とか。そういう意味では「一応、親切だよな」と思いながら作っていましたから。

一同:(笑)。

幾原:作っている時は「分かりやすいだろ」と思ってたんだけど、あんなに置いていくとはねえ。

藤島:いきなり、「決闘」。

幾原:そういうところは置いていってますよねえ。

藤島:そして、いきなり「鐘」。何故、鐘が鳴る?

幾原:ああ、そうか。そういうところも、置いて行ってしまっているのか。それは、気がつかなかった(笑)。

一同:(笑)。

藤島:決闘の時に、鐘がカラーンカラーンと鳴るじゃないですか。最初は「何故?鐘が鳴る」と思うんだけど、でも、見ているうちに「……まあ、いいかあ」と思ってしまう。

幾原:そういえば、1話を作っている時に考えましたよ。「何故、ここにいきなり決闘か」とか、「何故、鐘が鳴るのか」とかを、きちんと段取りを踏んで説明しなくてもいいのだろうかって。ただ「何でそうなるの?」という説明をいちいちやっていくと、作品全体が小さくまとまっちゃうんじゃないかと思ったんです。
だったら、そういうことは、むしろ、飛ばしていってしまった方が、気持ちがいいだろうと。

藤島:だからといって、あそこまですっ飛ばすというのは、これはまたすごい勇気だなと思いますね。それから、放映が進んでからは「あっ、毎回決闘をするわけじゃないんだ」というところで、また意表を突かれました。

幾原:どっちかというとそれは、制作上のコストパフォーマンスから逆算してそうなったんですけどね。

藤島:そうなんですか。でも、決闘しない話の方がかえって、手間がかかるんじゃありません?

幾原:最初に脚本を進めている時は、毎回アクションをやるのは無理だと思ってたんですよ。
「まあ、決闘しない回があってもいいだろうな」と思って、4話を作ったんですけど、……作業が大変だったんですよ。

藤島:大変でしょ?

幾原:笑いのエピソードの方が大変なんですよね。アクションがあった方が作りやすいくらいで。笑いって、やればやるほど難しくって。

藤島:七実が、ウテナ達の部屋へ行く話は、すっごく笑えましたよ。

幾原:ああ、タコとかマングースとかの回ですね。

藤島:「来るぞ、来るぞ」って、予想しながら見ていたのに、笑えちゃいましたからね。

一同:(笑)。

藤島:「もう、タコはないだろう」と思ってたんですけど(笑)。さすがに、生タコではなかったので、ちょっと安心しましたけどね。

幾原:あのシーンはね、シリーズ構成の榎戸洋司と、共同執筆みたいな形で脚本を書いたんですよ。二人で椅子に座って、二人で喋りながら、榎戸がワープロを打って書いていくかたちだったんです。
で、その時、忙しくってずっと寝てなかったんで、やってるうちに、どんどんハイになっていって、もう、ラリってる感じになっていっちゃって(笑)、ああいうかたちに。

藤島:(笑)。

幾原:影絵少女のシーンの絵コンテを描く時なんかも、ずーっとハイな感じでコンテを描いて、ワケわかんなくなっていっちゃう事があるんです。
3話で影絵少女が犬になって「ワン」「ツー」って言うんだけど、自分でも何が面白いのか、よくわからない。

一同:(爆笑)。

幾原:でも、描いてる時は寝ていないから「こりゃあ、面白いやあ」って思いながら描いてる。

藤島:でも、面白かったですよ。メチャメチャ。
あの分からなさがいいんですよ、全く、読めないところが。

幾原:スタッフも最初は分かろうと努力してくれていたんですよ。だけど、6話でカンガルーとかが出てきた辺りでね、「分かった!もう分かった。分からんということが、分かった」って。
この作品は分からなくてよいのだ、と分かってくれたみたいです(笑)。

一同:(笑)。

藤島:僕は、第1話を観て、「あっ、コレは分からなくていいんだ」と思いましたけどね。

――影絵少女の言っている事って、第2部「黒薔薇編」に入ってますますわからなくなりましたよね。

幾原:第2部もわかりやすいでしょ。

――わかんないですよ。

幾原:でも、しかたないよ。電波がそうしろって言ってきたから、俺は、そうしてるんだよ。

一同:(爆笑)。

藤島:電波系なの?

幾原:そう。電波で交信してるんですよ。
だから、影絵少女C子ちゃんと交信して、「こういうのがいいんじゃないの?」と言われて、で、そうしてるの。

藤島:そうかあ。

幾原:いやあ、スタッフの中にも何人かC子ちゃんと交信してるヤツがいるんですよ。だから、打ち合わせの時に「幾原さん、C子ちゃんは、俺にはそうは言ってなかった」とかって、言われる事はある(笑)。

一同:(大爆笑)。

幾原:ダウンタウンの松本(人志)さんがやってる「一人ごっつ」(フジテレビ系、深夜番組)という番組があって、割と好きだったんですよ。それまでのTVの笑いって、ドリフだったら志村がひっくり返って、笑うってスタイルじゃないですか。とんねるずとかウッチャンナンチャンになると、パロディの笑いじゃないですか。
ダウンタウンの松本さんがやってる笑いというのは、ちょっとそこら辺と違ってて、最大公約数的な共通言語を視聴者に求めてない、というのかな。どちらかというと笑いの価値というか、視聴者に対して割と攻撃的というのかな。
「分かる、コレ?」とか、「この価値とか、この空気って共有できる?」というふうに笑いの価値そのものを、模索している感じがするんです。それが面白いなと思ったんですよ。

藤島:それで『少女革命ウテナ』も、かつてない面白さを提供したいと。

幾原:まあ、そうですね。だから、『ウテナ』を引いた目で見ると、全然面白くないのかもしれないと思うんですよ。自分で言うのも何だけど(笑)。

一同:(笑)。

幾原:でも、それでもいいからパロディには、したくないと思ったんですよ。それはもう、真面目な描写にしても笑わせる描写にしても。
アニメーションって、大勢で作っているワケじゃないですか、その作業っていうのは、面白さというものを、スタッフ間でキャッチボールしながら模索する作業じゃないですか。そうして「この面白さって、分かる?」というふうに共通言語を模索していくと、「俺も知ってる、お前も知ってる」というものになっていく。
それって往々にして「かつて観た○○」になるわけですよね。どうしても、パロディとか模倣になっていく。それにはしたくなかったんですよね。どうしても、そういう方向に行ってしまうところは多少は、あるんですけどね。

藤島:なるほど。

幾原:意図的にセーブしないと、どこかで見たものばっかりの作品になっちゃうんですよね。

藤島:確かに、そればっかりになると、キツいでしょうね。

幾原:共通言語だけで作られた作品ってすごく閉塞感を感じちゃうんだよね。それは、視聴者を限定してるということでもあるんですよね。そういう意味では、『ウテナ』は視聴者を置いていっているかもしれないけれど、限定はしてないよなあとは思うんですよ。

藤島:最初から走っているレールが違うんですね。

――日本のアニメを見たことのない、外国の人が見ても、分かるかもしれないですね。

幾原:それは分かるだろうね。影絵少女が変な動きするのが面白い、というのは、きっと分かるよ(笑)。

――女の子が牛に返信しちゃって不思議だなあとか。

幾原:生徒会室で変なことが起こってておかしいとか。自分で「分かりやすいよな~」って思うもん、俺。

一同:(笑)。

幾原:扇風機がキャラと一緒に首を振るのが、おかしい。

藤島:その辺は、ドリフっぽいかもしれない(笑)。

――スタッフの人は、ちゃんとついてきてます?

幾原:大丈夫。ただ、最近、みんながみんな、そっちの方を向いてる感じがして、それはそれで心配だよね。「ホントに誰も止めないな」とか、思ったりして(笑)。

――誰も止めない?

幾原:そう。「誰か止めろよ」って思うんだけど(笑)。

藤島:もう、暴走しまくった方がいいですよ、『ウテナ』は。

幾原:僕は藤島さんの作品だと、『ああっ女神さまっ』が好きでしたね。最初に読んだ時に「藤島さんって、大人だよな」って思いましたよ。普通、ああいった傾向の作品を描く人って、わりと我を見失ってることが多いから。

藤島:自分で、見失ってるどうかなんて分かりませんからね。

幾原:キャラクターへの感情移入だけで作品を成立させようとする人が多いと思うんですよ。だけど、藤島さんの場合、そういうところが少なかったんで、そこが上手いなあと思って。「大人だなあ」と思ったんです。
僕らだったら、キャラクターに感情移入しまくってしまうだろうなあって思って。

藤島:感情移入しきれないのかも知れないですけどね。

幾原:そこがすごいなあ。

藤島:たぶん、自分で作ったキャラクターだからでしょうね。感情移入しきれないのは。

幾原:ああ、なるほど。僕も、今回の『ウテナ』では、そういう部分がありますよ。意図的にそうしているところもあります。
以前やっていた作品は、キャラクターに感情移入を「やってくれ」って言われているような仕事だったから、平気で移入してたんだけど。

藤島:したくない、とかそういうことはあまりないんですけどね。特に、ベルダンディーに関しては、距離をおいちゃうんですよ。どうしても、感情移入できない。
「自分で移入できなくて、どーする」と思うんですけど。

幾原:俺なんか、絶対に感情移入しちゃうだろうな。『女神さま』の演出をやれとかって、言われると。

藤島:そうですか。それはそれで観てみたいなあ。

幾原:それもまた、勘違いした物になるかもしれない。「誰が、こういう感情移入の仕方しろと言った!」って、ファンに怒られるようなね。

一同:(笑)。

幾原:よく周りのスタッフに「これじゃあ、ブチ壊しだろ!」って言われるんですよ。変な思い入れをして、キャラクターを描いてしまって。

――でも、アンシーは幾原さんが自分で感情移入しようとして作ったキャラクターなんですよね。

幾原:うん。そのつもりで作ったんだけど、ダメだった。

一同:(笑)。

――予想外のキャラクターになってしまった。

幾原:でも、最近は、すごく好きだよ。
アンシーが一番好きだよね。「ああ、こんなに面白い人だったとは」と、思っているよ(笑)。

藤島:作っているうちに、キャラが暴走することってあるんですよね。

幾原:自分でも意図してない面白さが出てますね。

――『ああっ女神さまっ』の内容は、幾原さんの目から見ると、どうだったんですか?

幾原:上手いなあと思いますよ。

藤島:分かりやすくやってるつもりなんですけどね。分かりやす過ぎるんじゃないかと、時々思ったりするんですよ。キャラのつかみ方とかね。

幾原:分かりやすいといえば分かりやすいですね。でも、あのテイストで、あんなに分かりやすい作品になってるっていうのは、ものすごくバランスがいいからなんだろうと思いますよ。

藤島:僕は、あまり、難しいことは出来ないんですよ(笑)。

幾原:藤島さんのような作品をやろうとしてる作家さんは多いんじゃないのかな。でも、その大半の人が上手くやれてないようにみえる。なんでやれないのかというのは、僕は漫画家じゃないからよく分からないんだけど。

藤島:たまーに、感情移入する方向に行きたくなるんですけどね。

――そろそろ話題を『ウテナ』に戻しましょう。

藤島:『ウテナ』は、とにかく、「観てゆきたい」と思わせるのがすごく上手いですよね。つかみがすごいですよ、いつもいつも。
第1話を観たときに、ガツンときて、「ああ、やられてしまった!すいません、これから毎週観ます」と思いました。

幾原:ああ、そうですか。それはありがたいですね。そんな風に好意的に観てくれる人がいたとは(笑)。
アニメーションの現場で仕事をしていると、世間のリアクションが全然、分からないんですよ。まるで、孤島で仕事をしてるような感じなので。

藤島:僕も、たまに『ウテナ』みたいなマンガを描いてみたいと思いますよ。

幾原:電波の命令で、ですか(笑)。

藤島:ええ、どっかから電波が飛んで来ないかなあと思いますよ(笑)。TVを見ていて、「くっそー。こんな発想、俺には出来ん」と思いますから。

一同:(笑)。

藤島:俺も電波が欲しい。

幾原:いや、『ウテナ』を分かってくれてるだけで、もう電波の仲間です。
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