スポンサーサイト
- --/--/--(--) -
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事のURL | スポンサー広告 | ▲ top
コンセプトデザイン・長濱博史インタビュー
- 2007/05/11(Fri) -
LD「少女革命ウテナ L'Apocalypse 6」封入特典・解説書より

 冒険したデザイン。手にした武器は違和感


――コンセプトデザインという役職ですが、具体的にはどんなお仕事をなさっているんですか。

長濱:世界観設定みたいなことですよね。具体的には背景美術のための、叩き台みたいなものを作っています。監督の頭の中にフワフワと浮いてるものを、形にしていく。
『ウテナ』の世界は、基本的になんでもあり、みたいなところがありますので、それをふまえつつ、各話数に出てくる小道具とか大道具とか、ちっちゃいものからでっかいものまで、作っていく。

――建物、自転車、小道具。

長濱:そうですね。あとは家具とか。画面設計みたいな仕事も少しやらせてもらっています。個々のカットのレイアウトだけチェックするとか、レイアウトだけこちらが切るという作業もやってますね。

――『ウテナ』の画面作りのコンセプトみたいなものはあります?

長濱:「見えているものが全て」ということですかね。言い方を変えると、「見せたいものは全て見せる」みたいなことです。ウテナが決闘場に向かう時に出てくる薔薇の門の裏側がどうなってるのかを、画面で見せようと思えば見せることはできるんですけど、敢えて描かない。どういうカラクリで門が展開していくのかも視聴者に提示してないんですよね。
そこにあるものを、なるべく描かないことで絵に描いた以上のものを表現したいというか。

――見せるべきものだけ見せる。

長濱:そうですね。見えるものが、作品の中では全てですからね。見せないでいいところは見せないでおく。

――いわゆるアニメのリアリズムとは違う、と。

長濱:違いますね。やっぱり、舞台美術に近いです。

――実は、薔薇の門は書き割りで、裏側にはつっかい棒があるかもしれない(笑)。

長濱:ええ、そうかもしれないですね。幾原さんの根本的なところにあるものが、舞台的なものだったりするじゃないですか。自分は舞台演劇とは全然、縁がないんですけど、幾原さんの中からモチーフやアイデアを引き出していくと、結果、そういう風になっていきますね。
そういう作り方は『ウテナ』の強味でもあったと思います。制作面でのコストパフォーマンス的な意味でも、作品の世界観に広がりを持たせる上でも。

――そういったことに関して、なにか、具体的なエピソードはあります?

長濱:学園に一番それが出てるんじゃないでしょうか。最初に、校舎の配置とか、学園の正門、理事長室のある塔とか、塔から見える海とか、そういうものの美術ボードを全部作って、美術監督の小林七郎さんの方に美術として起こしてもらいました。
基本的にはその第1話で作った世界観で、その最初に作ったものの持つエネルギーで、最終回まで持っていってしまおうという考えがありました。

――話数が進むにつれて積み重ねていくわけじゃないんですね。

長濱:そうですね、少しづつ加速していくんじゃなくて、最初の爆発で最後まで飛んでいくロケットのようなものでしょうか。だから、最初の小林七郎さんとの打ち合わせでも、「最初に学園を目一杯描いて下さい」というかたちでお願いしました。それが第1話のあの最初の場面に出てくる背景です。それ以降は、表現を絞って、学園をなるべく記号だけで表現する方向に行きました。真っ黒な学園のアーチが立っていてその後ろが空、というような画面が『ウテナ』にはたくさん出てきますよね。ああいった記号的な画面でも「ああ、鳳学園の中なんだな」と認知してもらえたのは、第1話の美術にインパクトがあったからだと思うんです。
それも美術スタッフの、小林七郎さんと小林プロの「美術」としての力量、技術のお陰ですね。あくまで、自分がやってきたものは叩き台ですから。出来上がった画面を見たときに改めて小林さん達のパワーに驚かされました。

――『ウテナ』のデザインに関して、例えば○○調とか、そういう意味でのコンセプトはあるんですか。

長濱:デザインラインについて明確な方向性というのは決めなかったんですよ。例えば学園の装飾品などは、既成のデザインにありがちなものから多少引用して使ってはいるんですけど、あくまでそれは見てる人間に説得力を与えるためだけに使用しただけです。
見ている人たちの中には「ドイツの○○建築だ」とか、「□□デザインの末期に見られる△△だ」とかって思ってる人もいるみたいですが。

――薔薇の門の取っ手とか、○○調とかありそうじゃないですか。

長濱:全然、ないですね。実際、あれに関しても、幾原さんからキーワードをもらって、そこから作りました。取っ手を握ったら何か起こりそうなものに見えなければならないとか、ウテナがそれを握ろうと思うようなデザインでなくてはいけないとか。それから、指輪が鍵のような役割をして、薔薇の門が開くようになっているから、指輪が鍵になってることもデザインの段階で盛り込まなければいけない。

――あの取っ手のところには、水が溜まっているんですか。

長濱:そうです。初期には、薔薇の門をくぐった向こうの世界に関して、水に満たされた世界のイメージが、あったんですよ。だから、薔薇の門が開くときには、水が大量に流れ出たりしているんですけどね。画面では、見えてないですけど、螺旋階段の一番下の方にも水があったりするんですよね。

――そもそも脚本の段階では螺旋階段は、なかったんですよね。

長濱:そうですね。最初は茨がまずあって、それを抜けると霧に包まれた決闘場が出るというかたちでした。
絵本とかでよくある、お城に向かって伸びている道がありますよね。曲がりくねった道が。ああいうのが伸びててお城に向かっていくという、そういうメルヘンチックなビジュアルイメージを残しつつ、かつ現実的なものをと考えて、螺旋階段に落ち着いたんです。幾原さんが「支柱を斜めにしてみないか」と言ってくれて、斜めの螺旋階段になりました。あれは自分と幾原さんの間でデザインが二転三転して、途中で幾原さんが描いたりもしているんです。
螺旋階段や決闘場は、見方によっては、いろんな意味を感じとれるようなデザインになっていると思います。だけど、作ってるときには、本当に手探りでしたね。

――印象的なデザインとしては、薔薇の門がありますが。

長濱:薔薇の門のデザインも色々ありました。門が開く仕掛けもあんまり不思議になりすぎないというか、魔法のような力で開くのはやめようというプランがありました。ですから、例えば、最初の頃には、マス目が並んでいるパズルみたいなかたちにしようというアイデアもありましたね。結局、何の図形か分からないものが回転することで薔薇の形になって開くというコンセプトで、デザインを詰めていきました。幾原さんと一緒に、ただひたすら紙に思いつく限りの形を描いていきました。
その中で、最初は薔薇の形に見えないものが持ち上がって、くっつくと薔薇の形になるということになり、展開した形は、鳳学園だから鳥にしようか、ということで今のデザインに落ち着いたりしましたね。

――なるほど。他に何か、手こずったデザインは?

長濱:生徒会室ですね。あれは最初は、どうやっても発想が「部屋」から出られなかったんですよ。ビーパパススタジオのスタッフみんなで描いたんですけど、誰一人として部屋の中から出られなかったですからね。

――生徒会「室」ですからね。

長濱:それ以前に長谷川(眞也)の描いた学園のイメージボードの中に、学園の屋上に温室のような一角があって、普通日本にはないような植物とかが咲き乱れているというものがあったんですよ。生徒会室のデザインがなかなか決まらなかった頃に、長谷川が屋上にテーブルをひとつ置いて生徒会のメンツが悪巧みするようなかたちはどうだろうって、言い出したんです。真っ青に空が晴れてて、見たこともないような南国の鳥とか飛んでてさ、とかって言ったんですよね。
そのアイデアを幾原さんが膨らませて、塔の端に飛び出すようにしたんです。生徒会のメンツが本来覆い隠すべきような秘密の会話を、とてもオープンな場所でしてるのが、演出的に面白い。生徒会の面々一人一人をカメラで撮っていった場合にも、バックは空だけとかになったりするんで、それがまた面白い。画面の中ですごく美しいんじゃないか。生徒会室は一番手こずったんじゃないでしょうか。

――根室記念館は。

長濱:あれは小林七郎さんのデザインです。特に、建築物としての説得力が必要だったからということもあり、小林さんにお願いしました。「黒薔薇編」で登場する新しい舞台は、今までの鳳学園や生徒会室みたいなオープンな形のものとはうって変わって、地下室だったりとかエレベーターだったりとか、狭い空間で繰り広げられることが多いものですから、「見せるべきものだけ見せる」という作り方が、難しいんですよね。エレベーター内を撮ればエレベーターの内側が全て見えますし、百の棺桶も見せれば、全部見えてしまう。それじゃあ、その中で『ウテナ』のコンセプトである、見せたものだけ、表現したいものだけを記号化して盛り込むということを、どこまで出来るかという作業でした。

――例えば、音楽室だと何もないところにピアノだけあって、窓が並んでて、というかたちですよね。ああいうのは、どんな風にデザインが決まるんですか。

長濱:各話に登場する音楽室や、図書室などは、演出さんと密に打ち合わせをして詰めていきました。暗い空間にピアノがあって、窓が斜めに上がるかたちで並んでいる。それを音楽室の記号にしているわけです。ポンと1カットだけそれを見せれば「あっ、音楽室」とわかるように。それくらい、見ている人に与える象徴的な、記号としてのデザインとして確立できるように。そこを重点に置いてますよね。
音楽室の窓の形もそうですし、学園のアーチも、生徒会室のステンドグラスも同様ですね。塔がどういう風に見えているかで、学園から近いか遠いかが分かるようにするとか、学園の形自体が記号の塊です。
話は違いますが、今、作業が最終回近くまできているんですが、個々の話数のために作ってきた設定が、最終的にひとつの世界に落ち着いてきている実感があるんですよ。
幾原監督には、僕に個々のデザインを発注する段階で全体の流れが見えていたんでしょうね。一緒に作業をしていても見てるところが違ったんだなあ、幾原さんはすごいな、と思います。

――些細なことですけど、薔薇のマークがあっちこっちについているというのは、誰が考えたんですか?

長濱:あれは、自分が強引につけていったみたいなものですね。ここにも薔薇、あそこにも薔薇というようなかたちで。

――薔薇は鳳学園の、象徴なんですか。

長濱:そうですね。最初から「薔薇」がキーワードになっているのは分かっていたんですけれども、あそこまでになるとは幾原さんもあんまり考えていなかったんじゃないでしょうか(笑)。

――第9話でウテナの両親が入ってる棺桶にも薔薇のマークがついていますよね。あれは鳳学園の棺桶なんでしょうか。

長濱:いえいえ。言っても仕方ないことかもしれませんけど、あれは宗教的なものを一切廃したところでの「死」のイメージというか、そういうところに持っていくために使ったんですよ。

――あ、むしろ、キリスト教的にしないために、薔薇を使ったんですね。

長濱:ただ、見ている人には「棺桶にまで薔薇がついているのか」と思ってもらえばいいんですけどね。

――幾原監督とのやりとりで印象的だったことは。

長濱:自分で「これはかっこいい絵だな」と思ったデザインは、まず幾原さんの方からOKが出なかったですね。

――あっ、そうなんですか。

長濱:「これはかっこいいな」というものよりは、「ここまでやっていいのか」と思ったものの方がOKが出やすかったですね。
『ウテナ』という作品の中における世界観の設定が、軽いものだという感覚はなかったんですが、背景美術にまで『ウテナ』の物語やキャラクターにあるような、不思議な……何て言ったらいいんでしょうね、チグハグ感というか、そういうものが必要になるとは自分も思っていなかったですから。ただやっぱり、監督と話していくと、それが一番重要なんだ、と。

――違和感。

長濱:そうです。作品の中での違和感。それが、背景美術にも一番必要なものなんです。普通のものに見えてしまう、流れていってしまうものに対しての、恐怖感みたいな感覚すらありましたね。
「何でこんな形をしてるんだ?」と思われるようなものでないと、見た人がその形を記憶に留めてもくれない。「ここまでやっていいのか」と思うところまでやって、初めて人は少し違和感を持ってくれる。そこまでやらなくっちゃいけない。そういうことに関して大変に勉強になったなあと思う反面、こういうやり方でない普通のアニメーションに自分が参加した場合に、どういう関わり方をするのだろうか、という怖さはあります(笑)。

――ここで磨いたスキルが、他にアニメでも使えるのだろうかということですね。

長濱:そうですね。でも、本当に、デザインをやっててこんなに楽しい作品はないんじゃないかと思うんですけどね。本当に楽しいです。
スポンサーサイト
この記事のURL | インタビュー | TB(0) | ▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://kasira.blog97.fc2.com/tb.php/36-e1f03e8f
| メイン |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。