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「漫画とアニメの幸福な関係」 さいとうちほ×長谷川眞也対談
- 2007/05/15(Tue) -
さいとうちほ(原案・漫画) VS 長谷川眞也(キャラクターデザイン)
徳間書店「アニメージュ」 97年6月号付録「ウテナ白書」より

――最初に、さいとうさんの絵を見た時の印象はどうだったんですか?

長谷川:かれこれ2年半ほど前になるんですけど、幾原さんに「企画は、この人の絵でいくから」といって、さいとうさんの『白木蘭円舞曲』を渡されました。僕は少女漫画をあんまり読んだことがなくて、さいとうさんの漫画もその時、初めて見ました。
最近、アニメっぽい絵を描く漫画家さんが多いんですが、さいとうさんの絵にはそういうところがなくて「やりがいがありそうだな」と感じました。極力、アニメーションっぽくない絵柄でやりたかったので。

さいとう:それはハードルが高い方が、やりがいがあるから?

長谷川:そうです。

さいとう:私も、ハードルが高い方がやりがいがあると考える方なの。だから、なるべく「これは無理だな」と思うようなことに挑戦するようにしているんです。「コレは楽勝!」と思うような題材はやらないって。

長谷川:そう思います。僕は『ウテナ』の前にも、キャラクターデザインをやってみないかという話をいくつかもらっていたんですが、それは、大概ゲームのキャラクターが元にあったりとか、アニメ風な絵柄の漫画だったり、わりと誰でも描けそうなものが多かったんです。
さいとうさんの漫画の場合は、多分、アニメにするには相当難しいだろうな、だからこそ、アニメにすると面白いんじゃないかと思いました。案の定、やってみたら、相当に大変だったですけれどね(笑)。

さいとう:すごく大変そうだったよね。「こんなに苦しめてしまって、スマン!」と思っていました(笑)。

長谷川:いえいえ(笑)。ひとえに、僕の技術不足でもあると思うんですけれど。キャラクターデザインという仕事が初めてだったので、なかなか要領を得なくて。最初に描いたものが、全然似てなくて……。すごいショックで、暫くフヌケ状態でした。

さいとう:そうなの?

長谷川:立ち直るまでに、結構時間かかりましたよ。昨年の1月ぐらいから作業に入って、結局全部のキャラクター表が出来たのが秋でしたからね。

さいとう:キャラの中では、ウテナが大変だったって聞いたけど。

長谷川:ウテナがいちばん大変だったですね。あまり特徴がないので。

さいとう:アニメのウテナは可愛いですよ。今は、私が長谷川さんの絵を見ながら、漫画を描いてますから(笑)。

長谷川:ウヒャー(泣)。それだと、さいとうさんの絵と僕の絵で、色気を相殺しちゃうことになるから、やめておいた方が……。

さいとう:そうですか?(笑)

――さいとうさんが長谷川さんの描いたウテナを最初に見た時の、第一印象は?

さいとう:最初に上がった絵は、すごく大人っぽいなあ、と思いました。その後、見せてもらった絵は可愛らしくなっていたので、ホッとしました。あまり大人っぽいと、アニメだとまずいんじゃないかなと思ったので。

長谷川:掴み切れてなかった、というのがあるんですよ。さいとうさんの絵って、アダルトな色気があるんで、どうしても描いていると大人っぽくなっていっちゃうんですよ。

さいとう:えーっ?私は可愛く描いてるつもりなのに(笑)。自分の絵のことはよく分からないケド。

長谷川:キャラデザインをやっている間に、さいとうさんから、時々手紙や漫画の単行本が送られてきたりとかして。それを見るにつけ、「ああ~、まだ、キャラ表を全然見せてないのに、なんだかすごい期待をされている!」とすごいプレッシャーを感じていました。

さいとう:ウフフ。そりゃあ、もう期待してましたよ。ちゃんと期待通りに、いえ、期待以上にやってくださったので、とっても私は感激です。

長谷川:いえいえいとんでもないです。さいとうさんの絵の色気の十分の一も出てないんじゃないかな、と思いますので。

さいとう:そんなことない。

――さいとうさんは、完成したアニメを見た感想はどうですか。

さいとう:気に入ってます。特にオープニングがすごくカッコよいので、ビデオで何度も見返しました。放映1日目で何度も何度も見返して、「こんなに見ていて、もし、間違ってビデオを消してしまったらどうしよう」とか思っていたら、案の定、間違って録画ボタンを押して、消してしまいました。もう、大ショックです(笑)。

一同:(笑)。


長谷川:さいとうさんの絵は、よく「宝塚テイスト」だって言われていますが、多分、それって体全体を使って感情表現をするとか、手のしぐさとかで色気を出すようなことだと思うんですよ。
さいとうさんの絵って「止め」の絵のすごく魅力があるんですが、アニメーションでそれをやるのって思ったより大変だなと思ってます。さいとうさんの絵は、一枚絵で全部表現できているのであって、アニメにして、動かしちゃうと魅力が半減しちゃうんじゃないかな、と。

さいとう:そうなのかなあ。

長谷川:よくあるんですけど、ハッと驚いた時、風も吹いていないのに髪の毛がブワッとなびいていたりするじゃないですか。ああいうのも感情の表現だと思うんですが、アニメでそれをやると、「なぜ、コイツは止まっているのに髪がブワッとなびいているんだ?しかも、なびいたかたちで固まっている」ということになっちゃう。

さいとう:ウフフフ。そうねえ。確かにアニメって動いているから。漫画は、止め絵で、いちばんカッチョイイポーズをビシッと描いておいて「あとは皆さんの想像におまかせしますわ」ってとこが、余計にイメージが増幅させるところがあるんだけど、アニメは描いちゃわないといけないからね。

長谷川:「止め」を多用するとか、やり方はあるんですけど、全部が全部「止め」というわけにはいきませんからね。

さいとう:かっこいい転び方とか、難しそうだよね(笑)。私が漫画を描く時は、転ぶシーンでも、いちばんかっこいい瞬間だけパッと描いておくんだけど。

長谷川:以前に、さいとうさんに宝塚に連れていっていただいたんですけれど、宝塚の舞台って、何もしないで、会話の間、普通に立っているだけでも役者さんのポーズがかっこいいんですよ。

一同:(笑)。

長谷川:キメている時もかっこいいんですけど、それ以外の時も絶対スキを見せない。ああいうのは、すごく勉強になりましたね。

さいとう:舞台のポーズって、鍛錬で出来ているのよね。舞台は踊りで、踊りで動きをちゃんと訓練されているから、自分の思うとおりの形が作れるんだろうと思うけど。あのかっこよさを絵にするのは大変ですよね。

長谷川:さいとうさん自身も、バレエをやっていたんですよね。

さいとう:うん。やってたんですよ。

長谷川:絵を描く時に、そういう引き出しから、自然にポーズが出てきたりとかするんですか?

さいとう:自然に出てきたりはしないけど、ただ、自分が踊っていたから、踊りを見てもどこに力が入っているかとか、どこにポイントを置いて動いているかが、わりと分かるんです。
「今、手の先で感情を表現しようとしているなあ」とか、「どこに重心があってどこの力を抜いているなあ」とか、それはバレエをやっていたせいもあって、分かるのかもしれないですね。

長谷川:今の、日本のアニメーションは、リアル描写が、ハイクオリティーにとられる傾向が強くて、あまり無意味なポーズとかは、切り捨てられる方向にあると思うんですよ。

さいとう:そうなんですか。

長谷川:動きの理屈に合わないポーズを無くしたり、描線にしても無駄な線をどんどん省いていって、最低限の情報だけの、単純な絵になっていると思うんです。さいとうさんの絵は、それとは逆に様式的なところ、様式美が魅力なんじゃないかなと思うんですが。

さいとう:その辺が、非常に難しい部分なんですね。

長谷川:僕がそういう、最近のアニメの手法に慣れていたというか、器用貧乏になっていたのかもしれない。

さいとう:そんなに苦労してるんですね。ただカッチョイイ顔を描けばいい、というわけでもないんですね。

長谷川:しかもさいとうさんは、顔もそうですけど、体もちゃんと描けているので。

さいとう:そ、そうかな~?

長谷川:僕は、アニメーターになって7年経つんですけど、多分、去年一年間がいちばんじっくり自分の絵と向き合った初めての年でした。それまでは、他人のキャラクターを原画にする、ということばっかりだったんです。
さいとうさんの絵を見ながら、自分の絵に変換していくということを、じっくりやって、良くも悪くも、初めて自分の絵が分かりました。「なんて、ひねくれた絵なんだろう」と。しっかり性格を反映している。

さいとう:(笑) そうなの?

長谷川:素直にストレートに描けばいいのに、なかなか描こうとしない。体が言うことを聞いてくれないというか。

さいとう:それはやっぱり、自分のスタイルがきっちりあるからじゃない。

長谷川:それまでの仕事で変なクセがついたのかも知れないですけどね。

さいとう:長谷川さんは、アクションシーンがすごく上手いと、幾原さんからよく聞いていたんだけど、やっぱりアクションを描くのが得意なの?

長谷川:どうなんでしょうねえ。アクションは、わりと楽に描けるんですよね。どちらかというと、ラブシーンみたいに、顔と顔が接近してお互いに演技し合う、みたいな方が難しいですね。

さいとう:ふーん。

長谷川:アニメーターの中でも、そういうシーンが描ける人って、あまりいないんじゃないかなあ。微妙に首を傾けたり、表情が変化したりするようなカットの方が、アニメーターのデッサン力や演技力がストレートに出てしまうんです。

さいとう:確かに絵を描くのって、自分が演技をしているというところがあるからね。

長谷川:そうなんです。

さいとう:私も、ラブシーンはすごい勉強しています。映画の好きなシーンを何度も観たりとか、バレエの色っぽいシーンをいっぱい観たりとか。「こういうふうに迫っていくと色っぽいんだな」とか、「ここに手を置くと女の人が可愛らしく見えて、すごく大事にしている感じが出るんだ」とか、そうやって観て、マスターしたんです。まあ、ただ、好きで、しつこく見ているだけなのかもしれないですけど(笑)。
映画とか舞台とか、そういうドキドキするものをいっぱい観るのが、いちばん勉強になりますね。自分で実践するという手もあるんだけど、自分が実践してる時は、なかなか客観的には見れませんから。

一同:(笑)。

長谷川:そういう絵を描くには、テンションも大切なんでしょうね。

さいとう:う~ん(笑)、そうねえ。私は、毎月そういうシーンがあるような漫画ばっかり描いているけど、やっぱり気持ちが高まらないと描けない。ムードを自分で高める為に、ロマンチックな映画やバレエの映画を観たりして、「ああ、ステキ♡」と思ってからネームを描いたりするのね。意識的に気持ちを高めるの。

長谷川:毎月恋愛しなきゃならない。

さいとう:そうなんですよー。「今、そんな気分じゃないのにー、なんでこんな因果な仕事を始めたんでしょ」とか、情けなく思うことがしばしば……。

長谷川:プロフェッショナルですよね、嫌でも煩悩を引き出さなきゃならないというのは。

さいとう:そう。ツラい仕事なの。長谷川さんは、そういう事ないですか?

長谷川:いやあ、僕の煩悩は、言うと身もフタもないので……。

一同:(笑)。

長谷川:むしろ、僕の煩悩は、抑えられると逆に出てくる、というか。抑えていかないと出ないみたいですね。

さいとう:抑えるって?

長谷川:例えば、少女アニメをやっていて、「これは少女ものなんだから、可憐なムードとか、清潔感を出せ」とかって演出家に言われると、そういうことに逆らいたいという気持ちが……。

さいとう:(笑)。

長谷川:煩悩じゃなくても、枷に逆らいたいという気持ちはありますね。枷に逆らった方が力が出せるというか。少年漫画に参加したら、少女漫画風の絵を描くかもしれない。

さいとう:ああ。分かる、それは。私も長谷川さんと同じ、ヘソ曲がりのB型なので(笑)。他の人がやっているのと反対の事をやる、というのはよくやるのね。

――『ウテナ』では長谷川さんの枷は何ですか?

長谷川:今まではキャラクターデザインをする人が別にいて、原画や作画監督として作品に参加してきましたから。それを枷にして「いかにキャラクターデザインの絵から、はずれたものを描くか」と思ってやっていました。

一同:(笑)。

長谷川:僕は、そういうけしからんヤツなんですよ。これまでは、そういうベクトルでやっていたんですけれど、でも、今回は自分がキャラクターデザインですから……。

さいとう:ウフフフ。苦しいわけね。

長谷川:どうすればいいんだろう。キャラクターデザイン本人が、さいとうさんの絵と全然正反対のものを描くわけにはいかないですからね。なるべく、自分で枷を作るようにしています。

さいとう:自分で?

長谷川:自分で、自分の煩悩を抑えて、清潔感がある絵を描こうとしています。その方が、色々とにじみ出てきて面白いんじゃないかと。あと、周辺に対する反撥もありますね。この業界は視野が狭くなりがちで、ひとつの絵がウケると、すぐ横一列になる。だから自分がデザインをやるからには独自のものにしたいとは常に思っています。

――で、長谷川さんは、今のアニメの『ウテナ』の絵はどうなんですか?

長谷川:……まだ硬さが残っているみたいで、もうひとつ突き抜けてない。キャラ表も「完成品」ではなく、ウテナを描く上でのスタートラインと考えています。でも、オープニングで、気持ち、手応えがあったので、最近、わりと自由に手が動くようになってきた感じです。これがあんまり、自由に動きすぎるようになるとトンデモないことになるかな、とも思うんですが。

さいとう:いいんじゃない?(笑)

長谷川:大人なんだから、セーブしないと。

さいとう:いやあ、でももっと好き勝手に長谷川さんテイストが出てきた方が、きっとファンがぐっとくるような絵になるんじゃないかなあ。まだ私の線をどうやって表現するかを気にしてくれてるみたいだけど。みんながハメはずした時が楽しみ、と思っているんです。私の絵に似せてくれるのは、ここまでやってくれればもう大満足だから。後はもう、好きにやってくれれば。
基本的にアニメの絵はアニメの現場の人たちのものだから、やっぱり現場の人が楽しんで描いてくれるのがいちばんだと思うのね。それに『少女革命ウテナ』は、ビーパパスのみんなで作ってるものなんだという意識もありますし。

長谷川:恐れ入ります(泣)。やっぱ、さいとうさんってオトナだなァ。

さいとう:いえいえ。ウフフフ。
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