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「少女ウテナは、少女マンガに革命を起こす」 さいとうちほインタビュー
- 2007/06/10(Sun) -
さいとうちほ (原案・漫画) インタビュー
美術出版社「コミッカーズ」 97年8月号より

――東京・小平(こだいら)にあるさいとう先生の仕事部屋。ズラッと並ぶアシスタント机のあちこちに貼り紙がある。『アニメ版のウテナの衣装は黒に変更……』 『アンシーのドレスは……』。
これは今年4月からテレビ東京でスタートしたアニメ『少女革命ウテナ』と、『ちゃお』連載中のマンガ版との調整用のメモ書きだ。こんなところからも単なるマンガ作品と、アニメと同時に進行する作品との製作現場の差が伝わってくる。しかも、この作品、原作には『ビーパパス』という名前。アニメと同時進行の連載とは、なかなかしんどい作業ではないか?

さいとう:そうでもないですよ。マンガに関しては私のアイディアがメインだし、マンガの内容とアニメとは必ずしも一致しなくていいんです。マンガの方は好きにやってもかまわないって、アニメのスタッフからも言われてますから(笑)

――実は『少女革命ウテナ』の企画は、大ヒットアニメ『美少女戦士セーラームーン』を手掛けた幾原邦彦監督によるもの。
一昨年の春、その幾原監督からさいとう先生あてに1本の電話が入った。『キャラクター・デザインをお願いできませんか?』これが、『少女革命ウテナ』誕生の第一歩になる。

さいとう:ウテナの企画は、幾原さんが何年か越しで温めていたものなんですよ。でも、ウテナという主人公の女のコだけはずっと変わらずに生きてたみたいなんですけど、他の部分は二転三転、いろいろ変更があったようです。
ホントに突然のお電話で、私もビックリしてしまったんですけど、きっかけはね、幾原さんが、たまたま私の描いた『プチコミック』の表紙をご覧になったのね。ガウン一枚で抱き合う男女の絵だったんですが、それがお気に召したらしい(笑)。
≪絵に色気がある!≫と口説かれて、キャラクター・デザインを依頼されたんです。でもこの時点ではテレビアニメではなく、≪ゲーム化のための≫というお話だったんですけどね

――このとき幾原氏が熱く語った戦略は、『少女革命ウテナ』をメディアミックス作品にするというものだった。
まずゲーム化を実現し、ゆくゆくはアニメへ。それゆえ、さいとう先生が幾原氏から渡された企画書も、ゲーム向けに書かれ、RPGになるような中世風のSFっぽい内容だったらしい。しかしその≪中世風≫がいたく気に入ったさいとう先生。キャラクター・デザインを引き受けることにする。

さいとう:同じ絵を描く作業だけど、マンガとはまた違う魅力があるじゃないですか。キャラクター・デザインというのも、とても面白いお仕事だと思いましたね。
私、もともと仕事のストレスは他の仕事で晴らすタイプなんですよ(笑)。だからね、こりゃ、楽しいかも……って!

――そしてゲーム向けにデザインを始めたさいとう先生だったが、3ヵ月後の8月には急きょアニメ化の方向へ。秋からは一転、テレビ用のキャラクター・デザインを開始する。そして同時にマンガ化の依頼も受けるのだ。

さいとう:アニメ化できそうだから、ぜひマンガにもしてもらえないかって。幾原さんのセンスも理解できたし、わりと話も合ったので、じゃあやりましょうとOKしました。
実は、原作の『ビーパパス』というのは幾原さんを筆頭に、ウテナの企画スタッフがメンバーになっているんですが、最初は、キャラクター・デザインで参加した私もその頃にはメンバーの一員として企画に携わるようになったんです。
で、他のメディアミックス作品がどのようにして出来上がるのか、私自身詳しいことは知りませんが、このウテナに関していえば、私たち(ビーパパス)が雑誌に企画を持ち込むカタチで連載がスタートしたんですよ。

――通常、テレビアニメというのはマンガをもとにアニメ化されたり、マンガ編集部の企画からアニメ化されるパターンが多いが、この『少女革命ウテナ』の成り立ちは一味違うというワケだ。
アニメ化、そしてマンガ化とハコは決まったウテナ。しかしここへきての問題は中身の方であった。

さいとう:キャラクター作りで苦労したのはやっぱりウテナとアンシー。『とにかく女のコ二人がよくないとダメ』って幾原さんのこだわりが強くて。軍服のイメージっていうのは最初からあったんだけど、例えばデュエリスト・スタイルに変身したウテナの服の裾からのぞくレースとかね(笑)。この辺は、幾原さんのアイディア。やっぱり男性ならではの視点ですよね。
アンシーに関しては、肌の色が特徴的。私、以前にね『白木蘭円舞曲(マグノリアワルツ)』っていうインドを舞台にした作品を描いているんですが、そのときの雰囲気を活かしたかったんですよ。
あと『機動戦士ガンダム』のララァの影響もちょっとある……かな。

――女性キャラクターが最終的なカタチになるまで約1ヵ月。毎晩毎晩、電話やFAXで幾原氏との細かいやりとりが続いた。そしてさいとう先生は男性キャラクターに着手する。

さいとう:女のコに関してはすごく細かかったのに、最初に聞いた男性キャラ案が全然のれないヤツで……(笑)。冬芽は短髪で菅原文太みたいな硬派キャラ、西園寺も同じく短髪でメガネをかけていました。一応その線で描いてみたんだけど、そんな色気のないキャラが、女のコ受けするわけないでしょう?やっぱイヤだイヤだ!と反対して、一人ワガママ通しちゃいました。で、私のイメージはコレ!って出したら、すんなりOK(笑)。それでいまの冬芽たちが生まれたんです。男の人は男キャラにはこだわりないんですね~!


――ストーリーをつめはじめたのは一昨年の暮れ。アニメの脚本担当は榎戸洋司だが、彼を中心に年末年始は合宿を組み、ストーリーを練り上げていった。
しかし、アニメに先駆け『ちゃお』でマンガ版の連載をスタートさせようとした昨年の4月の時点でもなお、きちんとしたストーリーは出来上がっていなかったとか……。

さいとう:連載を始めようとしたときは、まだ具体的なストーリーが出来上がってなくてね(笑)。だからまず、前後編の『バラの刻印』という読み切りを私が勝手にでっちあげて、それから改めて出来上がった脚本にそって連載をスタートさせたんですけど、もう矛盾が(笑)……。最初から、つじつま合わせが大変……。

――確かに、マンガ版ウテナでは両親を亡くしたあと叔母に引き取られていたウテナが、叔母の海外赴任を契機に≪バラの刻印≫のナゾを追って『鳳学園』に転校することになっている。
一方、アニメ版ではウテナはすでに学園の生徒としてのすべりだし……。とはいえ、現在、アニメとマンガはほぼ同時に進行しているが、カタチの異なるメディアだけに、擦り合わせはやはり難しいという。

さいとう:ストーリーや設定に関しては、幾原さんと榎戸さん、そして私で決めているんですけど、マンガの方はまず自分でストーリーを考えネームを作って『ちゃお』の編集部にチェックしてもらいます。その後、榎戸さんとビーパパスのスタッフにFAX。
でもマンガにはページ制限があるし、アニメとはやはり見せ方が異なりますからね。アニメでは可能でもマンガじゃ不可能なこともあるし。その辺を考慮して、マンガはマンガで。私のやりやすいように進行させてもらってるんです。

――アニメ版とマンガ版の大きな違い、それは衣装にも見られる。マンガではウテナの学ランはピンク、でもアニメでは黒。

さいとう:最初に決めたキャラ・デザインが途中、どんどん変更されていきました。ウテナの学ランもそうだけど、アンシーの服もマンガでは最初、長袖なのにアニメではノースリーブになってます。その辺のつじつま合わせも大変かな(笑)。でも楽しい経験ですけどね。

――さらにアニメではクローズアップされて登場したキャラが、マンガではほとんど出ないことなんてこともあるのだ。

さいとう:七実ちゃんがそう。マンガじゃ写真でしか出てこないんだけど、アニメじゃしっかり大活躍してました。細かい差を突っ込んだらキリないかもしれないですよ(笑)。でもその辺の違いはメディアの個性でもあるし、どうしても気になる矛盾は連載を重ねる中で処理しています。
でもキャラクターの世界観と一致していれば、何もかもアニメと一緒でなくともいい。それがウテナの作り方なんですよ。

――ときには、マンガのアイディアをアニメに流用したり、アニメのアイディアをマンガにということもある。
基本的なストーリーは一緒だが、マンガはさいとう先生のオリジナルに近い。もともとさいとう先生の描く世界に幾原氏がシンパシーを感じたところからスタートしてる作品だけに、普段とスタイルが異なっていても、決して難しくはないという。
とはいえ、今回の企画、さいとう先生だけで勝手に動かせるものではない。しかし、何にもまして難しいのは、1話完結スタイルになっているアニメ脚本を物語に仕上げ、流れを作ることだと、さいとう先生はいう。

さいとう:アニメってね、ある意味≪やりっぱなし≫ができるんですよ。大筋がつながっていればOKというか……。でもマンガはそういうわけにはいかない。
例えばね、アニメの方は主人公ウテナの話は、まだまだ動いてないんです。でもマンガの場合、主人公であるウテナは常に主軸で動いていないと読者がついてこない。アニメの見方と、マンガの読み方ってやっぱり違うんですよね。同じ主人公、同じ設定でも目の行くところが違うんですから、今回はそれも勉強になりましたね。
それと、マンガでは恋愛の比重を重くしてます。でもマンガも10話ごろにはアニメとリンクするようになりますよ。この辺の強引な展開は得意だから(笑)。

――というのも、この『少女革命ウテナ』、アニメ放映は今年の12月までの予定。それと前後してマンガ連載も終了する予定だからだ。

さいとう:『ちゃお』は月刊誌ですからね。いまちょうど8月号を描き終えたところなんですが、そろそろまとめに入らないと……。でも、ラストはいったいどうなるんだろう? アニメとは、全然、別物になっちゃうかもしれませんね(笑)。
まっ、それも両方楽しんでもらえればいいんじゃないかと思いますよ。


――普段、自分一人の世界観で作品を生み出していくマンガ家にとって、何百人もの人間が集団で動くアニメの現場はどう映っているのだろう?

さいとう:マンガもアシスタントさんの力に頼る部分があるけれど、1本のアニメ制作に携わる人間の数はハンパじゃないですからね。それはスゴイ、パワーだと思います。
それとね、いつもは自分一人のアイディアでモノを描いているわけですが、今回、みんなの知恵を結集して1本作ってみてね、私はとても面白かった。幾原さんをはじめとして、アニメ系の男子って哲学的な空論を戦わすのが好きなのね(笑)。そのせいで、話が具体的になるまで時間がかかることもあるんだけど、作品に対する概念を一致させるというか、バックボーンを一致させるというか、これがアニメの現場のような共同体にはとても重要なことなんですね。
確かに、その部分が理解できてないと、共同作業はできない。そのあたりも勉強になったかな。

――『美少女戦士セーラームーン』の幾原氏といえば、業界では知らぬものなしのヒット・メーカー。二枚目、若手、ヤリ手と噂されるその幾原氏をさいとう先生はどう感じているのだろう?

さいとう:小室哲哉に似てる?そうかなー(笑)。でも魅力的な人物ではありますよね。
今回、幾原さんは企画者であり、すべての中心であり、監督なわけだけど、『少女革命ウテナ』というのは、アニメに対する彼の思いを結集したような作品なんです。
この企画を彼が何年も温めていたというのは、前にもお話しましたが、脚本、音楽、キャラクターデザイン……、自分と共通のテイストを持ったスタッフだけを集めて作品を作るのが彼の夢だったんじゃないかな。だから、当然こだわりも強いし、妥協もしない。
アニメ版ウテナの音楽に天井桟敷を使っているのも、幾原さんのアイディア(笑)。やりたいことはやりたいと、求めるものがハッキリしていて分かりやすい。

――自分が納得して気に入るまでは、何度でもリテイクを出す。
しかし、さいとう先生をはじめ、そんな経緯で集められたスタッフばかりゆえ、どこかセンスが合っていてモメることはないらしい。

さいとう:この作品は完全幾原カラーですからね。モノを作る人間って、作品に自分を入れ込むタイプか、まったく入れないタイプか、その2通りだと思うんです。それでいけば彼は前者の方かな。キャラクターになりきるタイプですね。
だからね、キャラクター・デザインのときもね、『ボクが自分を重ね合わせられるようなキャラクターを作ってくれ』って(笑)。でも自分をそこに重ね合わせて、最後まで引っ張っていくのが、彼の手法なんでしょう。
今回のウテナでは、うーん……強いて言えば、後半に登場するキーマン・鳳理事長は、幾原タイプでしょうか(笑)。作品に反映するとなると、ああいうキャラになってしまう……(笑)。でも案外主人公のウテナなのかもしれませんね。

――今回、アフレコも見学したというさいとう先生。アニメ制作の裏舞台を知って、いろいろと考えることも多かったとか。

さいとう:アニメっていうのはとにかくたくさんの人が関わっているんですね。それだけ人の手を借りなければ、完成しないメディアなわけです。なのにね、あまりにも労働条件が悪すぎる。
今回、私が『ビーパパス』に加わったのはそんな理由もありました。

――日本のテレビアニメでは、制作現場にいるクリエイターが企画を立ち上げた作品でも、彼らが原作者として認められることは滅多にない。また、ギリギリの低予算で作られる場合が多く、個々のクリエイターへの報酬は決して充分とはいえない。
だが、今回ビーパパスはその改革を試みた。

さいとう:企画の成り立ち自体が特殊なせいもあるんで原作を個人ではなく、ビーパパスという企画集団にしたんです。そのメリットが状況改善の方向へいけばいいと思うんですけどね。

――マンガ界とアニメ界の間には、こんな根深い問題が隠れていたのだ。


――今回のアニメ経験を活かして、先生はこの先、何を望んでいるのか。

さいとう:この前ね、アニメのウテナの方の脚本を一本ぐらいやってみないかって榎戸さんから言われたんですよ。難しそうだからとってもムリって言ったんだけど、楽しそーだなーって、ちょっと揺れてる。マンガのネームとはまた違う作業だし……(笑)。
それに連載が終わっても、アニメ作品には未来があるでしょう。ビデオ化とか映画化とかね。この企画を活かすことはまだまだ可能だと思うんです。その辺は、これからのウテナの盛り上がり次第ですが、これからもできるかぎりビーパパスのお手伝いしたいと思いますよ。

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