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「そして、革命の日」 幾原邦彦インタビュー
- 2007/08/17(Fri) -
徳間書店「アニメージュ」 98年01月号より

――監督、かわいいアライグマですねえ。

幾原:イロイロっていう名前なんですよ。

イロイロ:…………(カメラを向けられて緊張しているのか、キョロキョロしている)

――イロイロですか? どうしてそんな名前をつけたんですか。

幾原:人生って、いろいろあるなあ、と僕が思ったからですね。

――なるほど。イロイロ君は、普段からビーパパススタジオにいるんですか。

幾原:そうだね。僕が自宅にいないことが多いんで、ビーパパススタジオに置いておいて、スタジオのみんなに面倒見てもらっています。

――じゃあ、ほとんどスタッフの一員なんですね。

幾原:メインスタッフの打ち合わせにも必ず出席させているよ。イロイロも、みんなの意見とかを一応聞いてくれるんだけどね。

――アライグマに、打ち合わせの内容が分かるんですか。

幾原:そりゃあ、もちろん。

――たとえば「この絵コンテはイヤだ」とかって言うんですか。

幾原:そういうことも、ありますね。絵コンテを洗ったりしますよ。

一同:(笑)。

――洗っちゃうんですか。

幾原:そりゃあ、アライグマですから、洗いますよ。アニメーターの描いた絵を洗っちゃうとか。そういうトンデモないことをしますね。

――それは大変ですね(笑)。

イロイロ:…………。

――どうですか、イロイロ君? 最近の『ウテナ』は。

イロイロ:…………。

幾原:う~ん、今日は喋らないねえ(笑)。

――監督、最終話はどうなりそうですか?

幾原:最終話もいろいろと大変だったんだ。イロイロがいなかったら、本当に危なかったよ。イロイロが、いろいろと洗ってくれたから。

――ああ、絵コンテを洗って。

幾原:そうそう、洗ってスッキリさせてくれたんだ。僕の方で、アレもコレもやりたいって欲が出ちゃって、ゴテゴテと詰め込もうとしたんだけど、イロイロが「内容を絞れ」って言ってくれたんだ。そのおかげでスッパリとまとめることができたんだよ。

――なるほど、確かにイロイロ君は、なくてはならない『ウテナ』のスタッフですね。

幾原:そうだね。

――今回、写真が載るのは、第33話「夜を走る王子」と第34話「薔薇の刻印」なんですよ。33話はビックリしましたよ。

幾原:あの話もずいぶん、イロイロに、いろいろと考えてもらったんですよ。

――ウテナと暁生が深い仲になったことに関しては、どういう意図が?

幾原:あれに関しては、イロイロがこだわったんですよ。「なぜ、そういうことにこだわるのかな?」と僕は思ったんだけど、割と僕は動物の勘って信じるんですよ、野生の勘を。イロイロが「それだ!」って言ったんですよ。

――「それ」というのは、ウテナと暁生の関係について。

幾原:ええ。「それしかない」と言ったんです。イロイロがいろいろと言うんで「なら、いいか」と思いまして。

――なるほどね。あの時、ウテナが暁生に対して、対等の友達を相手にするみたいな喋り方をしているのはどうしてなんですか?

幾原:やっぱり、気を許してるんじゃないかな。

――普段よりも気を許している。

幾原:うん。そういう二人っきりの時って、なんかリラックスして、心を開くんじゃないかと思ったんです。そうしたら、イロイロも「そりゃあ、そういうほうがリアルだね」と言ってくれたんです。細かいところは一人と一匹で考えたんです。なあ、イロイロ。

イロイロ:…………。

――喋りませんねえ。

幾原:喋らないねえ、緊張してるのかなあ。

――あの話の絵コンテを担当した方なんかも「なるほど、監督とイロイロさんが、そうおっしゃるなら」みたいな感じで、ノってやってくれたんですか。

幾原:いや、絵コンテの担当者は「いくらなんでもアライグマの意見は聞けないよ」って言ったんですよ(笑)。

――ああ、なるほど。それは困りましたね。

幾原:そこで、僕が「それはお前、差別だよ!」って言って説き伏せたんですよ。

――確かに、動物だからって差別しちゃいけませんよね。

幾原:そうだよね、差別はいけないよね。

――33話で暁生とそういう関係になることと、34話のラストは、リンクしているんですよね。

幾原:もちろん、そうです。

――先にああいう関係になってしまった、つまり、ウテナが女性になった次のエピソードで「君はいつか女になってしまうから、王子様にはなれない」と、過去に言われていたことが分かる。

幾原:そうだね。だけど34話では、子供の頃のウテナ本人が「そんなことない」って言っている。あれも、残酷な現実を先に見せておくってことかな。

――34話の段階で、ウテナは過去にそういうことがあったのを思い出しているの?

幾原:いや、思い出してない。あのシーンは視聴者だけが見たの。だから、夢から覚めた時に、ウテナは「懐かしい風景の夢を見たような気がするけど、よくは思い出せないな」と言ってるわけ。

――なるほど。

幾原:というか、ウテナはそのことを最終回まで思い出さないよ。

――なぜ、王子様になろうとしてるのか、ウテナ自身には分からない。

幾原:結局、最後まで思い出さない。思い出さないけど、その時にした約束は果たそうとする。

――ウテナがああいう風にディオスと会って、ああいう女の子を見て、「王子様になって助ける」と決意したのは本当にあったことなの。

幾原:ウテナ側から見れば、言葉として語られていることは、全て本当だろうね。映像で描いていることが本当かどうかは、僕は知らないです。

――知らないって、そんな、あなた無責任な。

幾原:知らないですよ。だって、アニメーションなんだから。アニメーションには本当もウソもないでしょ。全て、絵で描いたものなんだから。

――なるほどね。イロイロ君もそう思っているわけ?

イロイロ:…………。

幾原:うん。イロイロなんかは、よく言ってますよ。「アニメは全部、作りもんなんだ。当然だろう」って。それは僕も共感できるんだよ。

――34話のAパートとBパートで、アンシーと王子様の話が2回語られるじゃないですか。同じ話なんだけど、ちょっと違いますよね。あれはどういうことなんですか。

幾原:割と単純だよ。つまり、伝え聞く話と「現実」の違いだよね。話って、他人を介して聞く場合は、伝えた人の主観や脚色が入って、面白おかしい話として伝えられたりする。それは、現実に起きたこととは、ちょっと違ってたりする。そういう「差」かな。だから、伝説みたいに語られている話としては、魔女と呼ばれている女の子は、一方的に悪いという風に語られているわけだけど、別の見方では、そうではないのかもしれない。

――ひとつの話について、二つの見方をAパートとBパートで提示しているわけですね。ということは、どっちかが本当なのかもしれないし、あるいは両方ともウソかもしれない。

幾原:そうだね。でも、両方とも本当かもしれないよ。

――両方とも、本当?

幾原:大事なのは、本当かどうかということよりも、どっちの見方に肩入れするかということだと思うんだよね。

――つまり、あれは同じ事実を描いていて、見方が違うだけってことですね。見ている人が、どちらの見方をとるか。

幾原:見ている人が物語を「どう見たいか」ということだけだね。それは、見る側が決めればいいんじゃないの、ということ。

――監督にとって、世の中というのはそういうもんなんですか?

幾原:世の中っていろんな現象が起きるけど、それに関しては、いろんな捉え方があるよね。重要なのは「自分がどう捉えるか」ということだけなんじゃないの。「いい」とか「悪い」とかいうんじゃなくてね。で、「こう思いたい」とか、「こう見える」という見方を選ぶのは常に自分、ということかな。

――34話は、どうしてああいうかたちにしたんですか。つまり、「アンシーと暁生とディオスの過去は、こうですよ」と、ひとつのストーリーだけを提示する方法もあるわけですよね。

幾原:あまり、善と悪を規定したくなかったんだよ。悪意というのを一方向だけに設定したくなかったの。要するに、絶対的な悪意を一方向に設定してしまうと、それはその作品宇宙に絶対的な神様が存在しているとか、絶対悪であるような怪獣が存在するというような表現と同じになっちゃうから。だから、「悪意」というのが、どこにあるのかというのは見る側が選べばいいんじゃないの、というかたちにしてみた。
見方によっては、個人に悪意があると思うかもしれないし、世界に悪意があると思うかもしれないし、いやどこにも悪意はないと思うかもしれない。あるいは、世の中全てが悪意だと思うかもしれないとかね。

――アンシーかもしれないし、暁生かもしれない。

幾原:だから、そういう意味では、前半の影絵少女の舞台の中では、悪意というのは個人の中にあるように設定しておいて、後半の回想シーンでは個人には悪意はないように設定してるよね。世界が悪意だ、というかね。

――なるほど、ディオスが「世界の果て」になったのは「世界」のせいだと。と、そこらへんのところは、イロイロ君はどうなんですか?

イロイロ:…………。

幾原:彼は、動物だからね(笑)、そこら辺は難しくてよく分かんないらしいです。

――ああ、動物だから(笑)。

幾原:彼は「なんでそんな難しいこと言ってんの。バカじゃないの!」って思っているらしいです。よく「もっと、楽しいアニメ作ろうよ」とかって言われるんだけど(笑)、「理屈が先行したような作品作ってどうするの」とかって言われますよ。

一同:(爆笑)。

イロイロ:…………。

幾原:イロイロは「面白くなくっちゃアニメじゃない」という考え方をするんだ。それも分からなくはないんだけど、僕との間で意見の調整が必要なことが時々あるんですよ。

――でも、僕はイロイロ君に共感できるなあ。

幾原:「もうちょっと、素直に作れよ」とか言われたりしてね(笑)。

――なるほど。

幾原:まあ、ものにはいろんな見方があるから、イロイロの言うことも、もうひとつの『少女革命ウテナ』世界だからね。

――じゃあ、イロイロ君は「七実の卵」とか「幸せのカウベル」とか好きなわけ?

イロイロ:…………。

幾原:いやあ、イロイロはああいうのはね、「アニメを冒涜してる」とか「ふざけてる」とかって言って怒るね。

――じゃあ、樹璃の話とかが好きなんだ。

幾原:いや、あれも、やっぱし難しくて分かんないみたい(笑)。

――ああ、動物だから(笑)。

幾原:そう、動物だから(笑)。イロイロは、コマーシャリズムにすごくうるさいんで。「もうちょっと、ちゃんとオモチャが出せるような話にした方がいいんじゃないか」とかって、ずいぶん怒られたよ。僕も、「たまにはイロイロの言うことも、ちゃんと聞かなきゃな」とは思うんだけどね。

――で、最終回は具体的にはどうなんですか。

幾原:最終回はイロイロもかなり口出してるんで、まあ、そういう意味ではエンタテインメント的な要素もありますね。

――ウテナとアンシーはどうなるんですか。

幾原:とりあえず、38話で「世界の果て」に行きます。「世界の果て」というのは……放映をお楽しみに、ということで。

――一応、決闘場とか上空の城とか、あそこら辺の謎は解けるんですよね。

幾原:解けます解けます。

――みんな、そんな謎は、解けないと思っているんじゃないかと思うんですけど。

幾原:解けます。イロイロが「そういうことは曖昧にして終わらせてはダメだ!」と言ったんで、スッキリさせます。

――「お城とはコレだったんだ!」みたいな。

幾原:ええ。まあ、衝撃的なラストシーンを見せますので。

――話は戻りますけど、アンシーはかつて百万本の剣に貫かれて、現在も貫かれたまま生きてるのね。

幾原:そうですね。

――それはどういう意味なんですか。

幾原:アンシーは、かつて社会のモラルに裁かれたんだろうね。彼女は自分が愛した人を救いたかっただけなのに、ああいうことになってしまった。逆に世界中の人々は、そのモラルによって自分たちは救済されるべきだと言い続けてるわけ。だから、アンシーは心を閉ざし、黙っちゃったんだろうな。
デュエリストっていうのは、その辺のことに薄々気づいてる人達のことなんだね。この現実世界はモラルによる救済はないってことに気がついている。

――難しいですね。そういうことに関してイロイロ君はなんて言ってるんですか。

幾原:「やっぱり、それは難しいよ」って言ってます(笑)。

イロイロ:…………。

幾原:「アニメだろ!これは」とか。イロイロはその辺はちょっと怒ってます。「卑怯な作り方するよなあ」とかね(笑)。

――なるほどね。チュチュより頭いいですね。

幾原:頭はいいですよ、イロイロは。

――それじゃあ、最終回に期待してますので、がんばってください。

幾原:ええ、ちゃんとドラマ中で「革命」を起こしますから。

――革命を起こしますか。

幾原:ええ、もちろん。楽しみにしていてください。

――イロイロ君は、最終回についてはどうですか。

イロイロ:Zzz、Zzz、Zzz。

――あ、寝てる。

幾原:動物だからねえ。

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