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ビーパパス座談会
- 2007/09/02(Sun) -
「少女革命ウテナ」放映最終日にビーパパススタジオで行われた座談会
青林工藝舎出版「少女革命ウテナ 薔薇の黙示録」より
――お疲れ様でした!たった今最終回を見終えたばかりですが、皆さんの感想をお聞かせ下さい。

榎戸:もう、感動しました。涙、涙の最終回ですね。

小黒:イヤなヤツだなぁ(笑)。さいとう先生は?

さいとう:キャラクターが涙を流すと一緒に涙を流してしまって。最後にアンシーが生まれ変わったようになってるのがすごく眩しくって、ピンクのドレスを着たらすごく奇麗になった感じがして、これからまた新しく始まるっていう雰囲気がすごくスタイルに出てて、印象的で驚きました。

小黒:僕は、絵コンテ見た時は「まったくしょーがねーなぁ。こんな話じゃ子供が全然分かんねーじゃんかよ」とか思ってたんですけど(笑)。でも仕上がったものを見たら、ものすごく画面が充実してて、非常に感銘を受けました。

長谷川:この最終回はとにかく勢いで乗り切りました。失敗するかもしれないものを、敢えて直球勝負で挑んだっていうか…。締切まで二週間しかなくて、みんな「破綻する」とか「絵コンテ見てムリだと思った」とか、そんなことばっかり言うんですよ(笑)。少ない時間で終わるかどうか本当に不安だったんですけど、各スタッフの皆さんのお蔭でこんなにいいものが出来て、ありがとうございました。感無量です。

幾原:まあ、人生イロイロ…と。自分じゃ客観的にはよく分からないけれど、でも今最終回を見てて、終らない話をやってるんだな俺は、っていうのを、なおさら実感したね。どの作品でも、何で終った気がしないんだろうって思ってたけど、多分俺が終らないようにしてるんだなって(笑)。

長谷川:今ごろ気がついたんですか?

幾原:終らない話作っているなんて言うと、二度と俺の作品をまともに見てくれる人はいないかも。「どうせまた終んねーんだろー」って(笑)。

さいとう:でも、そう言いつつ嬉しそうだよ。

幾原:ドラマの内容は39本中で一番テレ臭いね。

さいとう:最終回は今までとは別な話みたいな感じがした。やっぱりいつもの番組じゃないなって感じかなぁ。

幾原:いつもだと音楽の使い方も、わりとキャラクターから切り離しちゃってたけど、最終回はキャラクターの心情にベタベタにつけたから、他の話数とはだいぶ印象も違うはず。そういう意味では見やすい話数だよね。気持ちも入れやすいし。

小黒:気持ちは入れやすいんだけど、起きてることが何だかわからない(笑)。

――ラストシーンでエンディングテーマを変えたのはなぜですか?

幾原:キングレコードの大月さんが、一番最初に「これを主題歌にしたい」って持ってきたのがあのハミングだけのテープで、まだ歌詞がついてなかったの。俺もそれを聴いていいな、と思って。やっぱり一番最初に聴いた音楽からインスパイアされたものが多いんだよ。だから最後にちょっと初心に戻りたい、最初の印象に帰りたいと思って。

――ウテナを手掛けてから、皆さんご自身の中に革命は起こりませんでしたか?

幾原:いろいろと起きましたよ。勉強になったとしか言いようがないけれど。それに、やっぱりスタッフあってのものだなって感じしますよね。

長谷川:僕の場合、とにかく二年間すごくプレッシャーが強くて、一時は潰れかけたことがあって(笑)。最初の合宿の時からケチついちゃいましたから、僕。

小黒:あれがプレッシャーの始まりだったんだ。その上さいとう先生がまたどんどんプレッシャーかけて(笑)。

さいとう:えーっ! そんなこと絶対ないよぉ。

長谷川:いや、自分で勝手にそういうモードに入ってしまって、被害妄想とメチャクチャ闘ってましたよ(笑)。うまく描かなきゃ、成功させなきゃって考えれば考えるほど、キャラクターの表情が死んで行くようで。でもそれじゃイカンな、ってある時考えをガーッって変えて、それで自分が一番描きたいものを描こうと思いまして。

幾原:それは1話の前でしょ。

長谷川:いや、それに気がついたのはわりと最近のことで、それからは裸の絵も平気で描けるようになりました。

幾原:そうなんだ。

長谷川:そういう絵を描いてると、自分も気持ちいい(大爆笑)。

――榎戸さんの革命は?

榎戸:革命を終えてこの番組の企画を始めたような感じだったんで、思ってたことは大体全部できたかなと思ってるんです。でもひとつだけ心残りなのは、監督の案で、ウテナがキノコ狩りに行く計画をしてたんですけど(大爆笑)。結局企画段階でカットになってしまって。

幾原:キノコ狩りは途中であきらめて、栗拾い、というシナリオを書きかけてたんだけど、シナリオライターが「どうやって栗拾いだけで三十分ももたせるの?」って(大爆笑)。

小黒:いやぁ、それは実現しなくてよかった(笑)。

さいとう:私は、とにかく初めてづくしで、アニメに拘ったにも初めてだし。私の他のマンガ作品にも多かれ少なかれ影響が…。いつもはラブラブな二人がハッピーエンドになる話を描いていて、同性愛っぽいのは絶対ヤダって言ってたのに、そういうのも面白いか、と思うようになって、これは何かビーパパスの影響を受けてしまったなって(笑)。でもお蔭でマンガ賞も取れたし、ヨカッタのかなぁ、って(笑)。

――小黒さんはどうですか?

小黒:長かった、とにかく長かったね。三年前の春、さいとう先生に会ってキャラクター原案を頼んで「全てはうまくいくよ!勝ったも同然だ!」とか言って。それから次々に壁にぶち当たるたび「これさえ乗り越えれば勝ったも同然だ!」の繰り返しだった(笑)。

幾原:あの頃は月に一回ぐらいの割合で追い詰められて深刻になって、もうダメかもしれないってね(笑)。

さいとう:奇跡のような三年でしたねぇ。よく無事にここまできたなぁって。私、絶対に39話まで出来ないと思ってた(笑)。

長谷川:僕も、二年間スタジオで寝泊まりなんかもうこりごりですよ(笑)


――皆さんが深く印象に残っているのは何話ですか?

小黒:ストーリーとしては7話『見果てぬ樹璃』と26話『幹の巣箱(光さす庭・アレンジ)』だね。7話は幾原君はこうするだろう、っていう予想をフッて乗り越えたものだったし。26話は絵がすごくよかった。長谷川君の絵は12話『たぶん友情のために』がいい。

長谷川:ありがとうございます。自分の監督担当は半分ですけど。

さいとう:あの回は冬芽がエッチですごくいい。ロングショットから、冬芽をカメラであおっていく感じのところ、冬芽の表情もフリもエッチで。

長谷川:あれは確かさいとう先生と対談した後だったからだと思うんですよ。そこでバレエの話が出たんで、ムード重視の動きを結構意識してました。

さいとう:そうそう、長谷川さんにバレエのビデオを観せて、なんとかお願いします、って(笑)。

――さいとう先生はどうですか?

さいとう:何か、途中からバッって胸をはだけるのは驚きました(笑)。キャラクターのみんながやり始めた時、唖然としてしまいました。ビジュアルショックですよ(笑)。

小黒:あれはさいとう先生の好きな意味での胸はだけと違うんだよね。流派が違う。

さいとう:そうそう。男性の描く“胸はだけ”ってこういうもんなのか、って思いました。男の人がやると、ああまで直接的になるのかなぁって。男と女の違いを実感しました(笑)。

――榎戸さんはいかがですか?

榎戸:22話『根室記念館』です。シナリオ書いてても具体的なことが何も出てこなくて何だか恐くなっちゃって。でも幾原と長谷川君が何とかしてくれるだろうって、無責任に書いてしまって。でも実際フィルムみたらちゃんとしたものになってて、ありがたいなって。例えば30話『裸足の少女』で、ウテナと暁生がキスする話なんか、普通あれだけで三十分引っ張るのは辛いと思うけど、「ウテナ」の場合は演出とか作画の人が好きなことやるだろうって安心感がありましたね。

小黒:あえてシナリオでは真面目な話してるのに、フィルムになると野球してたりする、ってのはどう思うの?

榎戸:どうせやるだろうなってのは分かってましたから。「ああ、今日は野球かぁ」って(大爆笑)。

――長谷川さんは?

長谷川:僕はやっぱり1話『薔薇の花嫁』です。ロケハンを何回も重ねたり、ビジュアルを作り上げて言ったり、ディスカッションを重ねながら、まったくゼロのところから作っていって、初めて形になったのが第1話ですから。苦労も多かったけど、やっていて一番手応えを感じましたね。
でも後々になって観直すと、まだ絵がボヤッとしてるっていうか、監督にも当時散々指摘されてまして「絵がおかしいよ」って。でもその頃はベストだと思ってたから「どこが? 全然いいじゃん」とか言ってたんですけど、後になると1話を見るのがつらくなってしまって(笑)。

榎戸:ちょっと硬いんですよね。

小黒:途中からだんだん絵のテンションも上がっていったよね。25話『ふたりの永遠黙示録』くらいからスパークしてた。

長谷川:胸はだけでは、ピークだったのが35話『冬のこと芽生えた愛』ですね。もうあの頃は現場で脱がすのが流行ってて。誰がどれだけ脱がせるかって(笑)。絵コンテではそんなこと全然やってないんですけど。

幾原:監督の俺ですら全然知らない間にそんなことになっててさ。コンテでは裸になってないのに(笑)。

長谷川:あれは現場で競う楽しさです。久々に味わいました。

――幾原さんの印象に残った回は何でしたか?

幾原:俺もやっぱり1話、それから7話、23話、25話、それに最終回の『いつか一緒に輝いて』。
1話は今だから言うけど、半分自分が何やってるのか分からなかった。これ一体どうなってしまうのかなって(笑)。ただ「絶対運命黙示録」がかかった時に、なんかイケそうだなって思って。他の作品では絶対に出し得ないようなカラーはあると思ったし、貴重で珍しい作品になると思ったよね。
7話は、実はシナリオですごくもめてさ。榎戸には申し訳なかったんだけど、「これなかったことにしてくれ」って一度仕上がったものを全部チャラにしてしまって。というのは、あまりにもよく出来てたんで、完結しちゃいそうな気がして「もっと分かんなくしてくれ」って言ったの(笑)。
そこで実は樹璃は枝織が好きで、という関係が出てきたんだけど、その話が出た時に、逆に39本まで何をやっていけばいいのかがハッキリと分かった。僕自身もそれまではずいぶん揺れてたけど、「あ、これは要するになかなか勝てない人達、永遠に敗北し続ける人達の話をやっていけばいいんだ」ってね。

さいとう:敗北者なんだ…。

榎戸:敗北者っていうか、一話一話で問題に決着をつけるのはやめよう、ってことで、そういう意味では確信犯的にやろうと思ったのは、7話からだったのかもしれませんね。

幾原:敗北者って言っても、人によっては取りようがあると思うんだけど、「なかなかうまくいかないのが人生」っていう、自分の現状とずいぶんリンクしてて、こういう題材なら39話までつき合えそうだなって思ったんだよね。単純にお姫様と王子様が出会うだけの話だと、付き合えそうな感じがしなかった。

――23話は…。

幾原:さっき榎戸が言ったのとまったく同じで、7話の時と同じでシナリオが良く出来てたのね。つまり、よくできたSFというかファンタジーのような作品として解釈されるんじゃないかって恐怖が。何とかそれを回避しようとして、ああいう話にしてしまったんだけど。
25話は、出来上がったフィルムを見て随分励まされたよ。コンテも演出も作画もベストだった。あと最終話は、企画発端の時に持ってた心境とかなり近しいものだったと思うんだよね。それが具体的にフィルムに仕上がって行くのを見るにつれ、自分の現実とリンクしてきたという感じで。

小黒:具体的には?

幾原:ウテナが消えてしまう、暁生は自分を王子様にしてくれるシステムに異常に固執してた、アンシーは最後にリスクを背負って扉の外へ出てしまう、という三人三様の状況は、どう伝えたいということではなく、とりあえず自分としては正直な心境である、伝えたいんじゃなくって心境である、って感じで、自分にとってはずいぶんリアルなフィルムになってるなぁって。

さいとう:出来上がったフィルムを見たり、幾原さんの話を聞いたりすると「これは話を作りたいんじゃないんだ」っていうのがよく分かります(笑)。

榎戸:自分のシナリオワークの方向でまとめて「これでどうだ」ってやってたんですけど、幾原がそれを見て「良く出来てるねぇ」って一応ホメるんです。なんかすごくイヤそうに(笑)。「良く出来てる話ってのは良く出来た話だよ!」ってイヤミっぽくね。なんだこのリアクションはって(笑)。

幾原:こんなに見事にアニメになりやがってってさ(笑)。

榎戸:でも、そういう事を続けていかなかったら、39話まで続けられなかったと思います。前半はさいとう先生に「よくまとまりましたね」って言ってもらえると安心してたんだけど、後半の方は「えーっ、そんな事するんですかぁ~」って文句言われるような事がいいんだなって(笑)。「暁生がこうするんですよ」とか言ったら「ええっ!」っていうリアクションが大きければ大きいほど、何となく安心するんだ(笑)。

さいとう:でも、それは最初から予感としてあった(笑)。私がイヤがったりすると異常に喜んでるんだもん(大爆笑)。


――「少女革命ウテナ」は長い時間をかけて企画されたわけですが、その間に出た案で使用されなかったものなどを教えて下さい。

幾原:ウテナをやろうと決めてからは、そんなに大きな変化はなかったような気がするけど…。

小黒:さいとう先生に企画を持って行った時、すでに“男装麗人物”ではあったからね。

榎戸:『黒薔薇編』は最初の企画にかなり近いですね。

小黒:そういえば“理科教師の西園寺”っていう設定が以前あったね。

――西園寺が理科教師なんですか?

榎戸:そう、かなり性格の曲がったヤツで、いつもお母さんに甘えながら、女生徒にひどい事をすると、ウテナがこらしめる…。

小黒:で、美少年のゾンビを操ってウテナを襲う…。最初の企画から決闘物に変わった時にもまだ“理科教師の西園寺”の存在はあったよね(笑)。でも最初、ウテナは理想の人とハッピーエンドを迎えることになってたんじゃないの?

幾原:それはもちろん。

小黒:僕はそのつもりで見てたら「えっ?」ってなって。

さいとう:途中からどんどん話が変わっていっちゃって(笑)。

幾原:やっぱり自分の現実とリンクさせたかったのかな?

さいとう:でも結局何だったんだろうね、友達とは、友情とは?

榎戸:決められた価値観を破ろうってことだよ、革命っていう言葉をタイトルに使っているくらいですから。

長谷川:でも「本当の友達がいると思ってるヤツはバカだよ」っていう冬芽のセリフは辛辣でしたね。

幾原:友達とか友情とかっていう単語に、多分今の人って恐がっていると思う。一人では生きて行けない、という事は何となく分かってるんだけど、友達とか友情とか、道徳が与えてくれた言葉の規範では、一緒にいられないっていう危機感は抱えてるよね。キレイ事だけではなかなか生きていけないっていうか。
で、それに変わる言葉を模索してたんだけど、なかなか見つからなくてさ。じゃあ、見つからない変わりに、逆にそうじゃない言葉っていうので周りを埋めて行ったっていう事だと思うんだよね。

榎戸:あのセリフはドラマとセットだと思います。あの回で冬芽と西園寺がやってる事って、普通の高校生とかも「いいじゃん、友達じゃん」って使ってると思うんですよね。で、裏に回ると自分もそういうことをやっているのかなって、ちょっと恐くなってしまって(笑)。

幾原:友達っていう言葉で覚えるフィールドや規範じゃ生きて行けないってのが分かってるだろうから、そこいら辺にきっとピンときたりね。

――劇場版はもう決まってるんですか?

小黒:僕らの心の中ではね。ウテナの活躍はまだ続きますよ。アンシーもね。

幾原:大活躍ですよ、もう(笑)。

――それでは最後に一言お願いします。

幾原:(アライグマのイロイロを膝にのせつつ)これからも僕はイロイロと生きて行きます(笑)。

榎戸:わかんないよ、それじゃ(笑)。

長谷川:僕は幻のスパイスを探しにインドに行きます。

榎戸:「少女革命ウテナ」は僕の青春でした。

さいとう:あ、ズルイなぁ。じゃぁ、私は『三十代の全てをウテナに捧げた女です』ってことで(大爆笑)。

榎戸:ま、これほど好き放題にやれる仕事は、今後出会えるかどうか分からないなぁ。

幾原:でも最後までやりきれたのは奇跡だよね。毎回毎回こんなにうまく行くわけではないと思うけどね。

小黒:次も同じメンバーでやったら、多分憎しみのオーラに支配されるんじゃない(笑)。それにしても「ウテナ」は本当に人生勉強になりました。次はもっとうまくやりましょう。


(1997年12月24日/ビーパパススタジオにて)
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