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「絵描きのシッポ」 アニメーター座談会
- 2007/11/25(Sun) -
長谷川眞也・長濱博史・林明美・小黒祐一郎

上記メンバーによる座談会
ラポート「少女革命ウテナパロディ競作集 薔薇の革命」より
小黒:今回は「絵そのもの」について話をしましょう。まずは、テレビシリーズの話から。

長谷川:僕の中では、長濱や林さんが参加してくれた時点で、『ウテナ』本編の作画のクオリティに関する心配はなくなったんですよ。むしろ、クオリティが高いだけのものにしたくないというか、他の作品とは違った価値観のものにしたかったんです。

小黒:違った価値観でのクオリティを目指したということ?

長谷川:そうです。単に影が何重にもついている絵ということではなくて、『ウテナ』ならではのクオリティを目指したいと思ったんです。
僕は、シリーズの最初の頃は総作監として、各話の絵をチョコチョコと見ていたんですが、スケジュールの関係もあって、途中から作画監督は各話の担当に任せることになったんです。
それで、作監の作業をやる代わりに、何か方向性を打ち出したいと思いまして。

小黒:具体的には?

長谷川:放映が1クール過ぎた頃から、徐々に、版権(アニメ雑誌などの描き下ろし)の方でビジュアルテイストを呈示していきました。

小黒:なるほど。描き下ろしで他のスタッフに、方向性を示唆したんだ。長濱さんは、長谷川君に何か示唆された覚えはあります?

長濱:あります!

小黒:どんな風に?

長濱:示唆というかですね(笑)。原画を描いて長谷川に見せると、「もっと裸にしてくれ」って言われました(笑)。

一同:(爆笑)。

長濱:それだけでした。

長谷川:オレ、他のことについても、色々、言わなかったっけ?

長濱:他は、ほとんどなかった(笑)。

:私も、それらしい事を長谷川さんに言われたような記憶が……(笑)。

小黒:他の人にも、そういうことを言ったの?相澤(昌弘)さんとか。

長谷川:ええ。相澤さんは、割と僕の意図を汲んで展開してくれました。

小黒:暁生が自分の乳首を撫でるのも相澤さんが作監の回(第35話)だったよね。

長谷川:あの話は嬉しかったですね。長濱が作画したシーンで、冬芽と西園寺がどんどん脱いでいったでしょ。

小黒:生徒会室にマイクが立ってるシーンね。

長濱:あれは、絵コンテの段階では服を着たままなんです。

小黒:作画のアドリブだったんだ。

長谷川:あれは良かった。ほぼ満点です。「これでオレの役目は終わった」って思いました。

一同:(笑)。

小黒:あれが『ウテナ』の完成形なわけ?

長谷川:あのシーンって、最初、相澤さんは服を着せようとしたんだっけ?

長濱:そう、そう。

長谷川:長濱が脱がした絵を描いたら、相澤さんがさすがにマズイと判断して書き直して、服を着せたんだけど、それをまた強引に長濱が脱がせてしまったんです(笑)。

小黒:それをやるように、長谷川君から指示が出てたの?

長濱:いいえ、長谷川の放ったエロ電波をビビビと受けて、それに同調して描いていました(笑)。シリーズ終盤になると、他のみんなも長谷川に言われる前に裸を描いていましたよね。

長谷川:無意識に裸を描いてくれるように、長濱の机の脇にダイヤルQ2のチラシを貼ったり。

長濱:そのためだったのか、あれは!!

小黒:スタジオの壁に色っぽいチラシが張ってあるから何かと思った。あれは作戦だったんだ。

長谷川:作戦っていうかですね。ただ、「わかって欲しい」と思いまして(笑)。

長濱:やな感じだな~(笑)。

小黒:林さんは、どうでしたか。長谷川君からの電波をもらいましたか?

:ええ。時々、強烈なのを。

小黒:どんな感じのをもらうんですか?

:何かこう「あっ、やらなきゃだめなんだな」と観念しちゃうような電波を……(笑)。

小黒:エッチな絵を描けという電波が(笑)。

長谷川:そんな、イヤならムリしてやらなくてもいいのに。

:いえ、イヤなわけじゃないんです(笑)。

小黒:林さんが最初の頃にアニメ雑誌に描いていた描き下ろしは、女の子らしいおとなしい絵だったんだけど、中盤からどんどん色っぽくなっていった。特に、太モモがすごい迫力で。これが持ち味なのかと思ったんだけど。

:(笑) 偶然ですよ。たまたま、そう描いただけです。

小黒:そうかなあ。

長谷川:確かに最初は、林さんは華奢な絵を描いていましたよ。だからといって、ボクが足を太くしろって言ったわけじゃないです(笑)。

:自分では絵が変わったという実感は、全然、ないですね。

小黒:長谷川君の計画通りに、雑誌の描き下ろしも、テレビシリーズの絵も色気がある方向に動いていったよね。

長濱:僕らは「長谷川がこうするなら、こっちはこうしてやろう」って考えて。長谷川も「お前らがそうするなら、オレはこうしてやる」って感じで、互いにはりあっていました。

長谷川:色っぽい方向にいってほしいという要望は出しましたけれど、それぞれの自分の気持ちいい絵とか、センスってあるでしょう。自分は、こういうのをHだと思う、みたいな。それを出してほしいと思ったんですよ。

長濱:そういう意味では、長谷川は、みんなからうまく引き出していましたね。

小黒:長濱さんがHを感じるモノって何なの。

長濱:そうですね。透けて見える下着かなあ。

小黒:『ウテナ』で描いたっけ?

長濱:小学館のムックのピンナップで、下に履いてるパンツのラインが、ウテナの短パンに浮き出るように描いたんですよ。( 画像

小黒:ああ、そうなんだ。だけど、それをアニメ本編でわかるようにやるのは難しいね。

長濱:エンディングのディオスの後姿がありますよね。最初は、あのカットで白いズボンの下に、黒いパンツが透けているようにしようかと思ったんですけど、まずいだろうと思ってやめたんです。ディオスの黒いパンツはセクシーだろうと思ったんですけど……。

小黒:こうして聞いていると、長濱さんの方向性って、長谷川君や林さんとちょっと違うね。HはHなんだけど、男の色気なんだね。入れ墨をしているやくざの色気なんだ。

長濱:そうですね。実際、入れ墨とかには色気を感じますよ。

小黒:35話を過ぎると、西園寺って最後すごいいい顔するよね。シリーズ終盤の西園寺は、ほとんど長濱さんが描いているんだよね。

長濱:そうです。西園寺は、ちょっと女っぽくなりましたよね。冬芽と絡むようになって。

小黒:なるほど、西園寺は、冬芽とツーショットになって完成形なのだな。

長谷川:冬芽と一緒にいると西園寺は女になるの?

長濱:脇に冬芽がいると、西園寺は女形になりますね。

小黒:長濱さんが描くと、ウテナもヤクザのお兄ちゃんみたいだよね(笑)。

長濱:あ痛ァ(笑)。ホント、そうなんです。みんなに言われるんです。オレの描くウテナは、アキオチックだとかって。

小黒:長濱さんは、男の裸が好きなの?

長濱:好きですよ。

小黒:おお、意外な展開(笑)!

長濱:男が好きなわけじゃなくて、色気のある男を描くのが好きなんですよ。やり甲斐を感じるんです。

長谷川:長濱は、『ウテナ』の作画がはじまった頃は辛そうな顔をして、「男を描きてぇ!」なんて言ってましたから。元々、アメコミが好きだから、筋骨隆々としたキャラがでないとダメらしいんです(笑)。

小黒:長谷川君も、男でもOKなの?

長谷川:オレは、男にはそんなに関心はないです。男の裸を描くのは長濱の真似をしてるだけですから。

小黒:色気のある男の絵は、長濱さんから吸収したんだ。

長濱:そうなの?

長谷川:そうですね。絵で男を脱がすのが気持ちいいってことも、長濱から教わったんですよ。

小黒:林さんはどうですか。『ウテナ』に参加していて、自分の絵のポイントは「ここだ」というのはあったんですか?

:えっ、Hのポイントですか?

小黒:Hでなくてもいいです(笑)。

:最初の頃は、夢中でやっていましたね。さいとうちほさんの絵の感じを出したいとばかり考えていました。

長谷川:林さんは『ウテナ』に参加することになる前から、かなり、さいとうさんの作品を読んでいたんです。ドンピシャリの人選でしたね。

:最初は、普通の少女マンガだと思っていたんです。でも、はじめてみたら全然様子が違っていて(笑)。最初にやった6話のカンガルーが出る話は、ギャグだから、まだよかったんですけど……、7話とか14話になると様子がおかしくなってきて、「こんなシーンをやってもいいのかなぁ」と思いつつ仕事をしていたら、そのうちに面白くなって、ハマっちゃって……。

小黒:6話の最後で、カンガルーをやっつけた冬芽が、笑って振り向くカットがかっこいいよね。かっこいいだけに笑えてしまう。

長濱:林さんの絵で、あの話だからおかしいんですよね。めちゃくちゃ面白い。

:ギャグは、もっとやってみたかったですね。結局、あの1本だけでしたけど。

長谷川:長濱の絵は比較的わかりやすいよね。男が色気を出しているって感じがする。だけど、林さんの場合は、どこに色気の根本があるのか探ったんだけど、なかなかわからない。

:別に探らなくてもいいじゃないですか(笑)。

長谷川:いや、林さんに何か好きなものがあれば、こっちとしてはそこに集中して……火に油を注いでみたいなあと。

小黒:なるほど。ツボを探して、そこを押すのがリーダーである長谷川君の仕事なわけだ。

長谷川:そういうポイントを見つけてみたかったんだけど、テレビシリーズをやっている間は、林さんはシッポを出さなかった。何でも巧く描いてくれるんで、「ここに執着しているのよ」っていうところが見つけられなかった。そこは林さんの禁断の領域というか……。

:はい。まだ誰にも見せていません。

長谷川:オレなんかは、仕事でも好きなところや、執着しているところなんかを、全開で出しちゃうんだけど、そういう意味では林さんは余裕があるのか、なかなかシッポを出さんなぁ~っていうところはあります。

小黒:本人と作品に距離があるってことかな?

長谷川:どうなんでしょうね。

:これから見せるかもしれませんよ。

長谷川:これから?

:うん。

小黒:作画に関しては、テレビシリーズの『ウテナ』を、もう1年見たかったね。あのまま作画のテンションが上がっていたら、どうなったかを見たかった。

長谷川:あの辺で終わってよかったですよ。あれ以上続けると、えらいことになっていたかもしれない。みんながエゴだけで描くようになってしまったかも。テレビシリーズは、みんなのやりたいことが出始めたあたりで終わったから、いいタイミングだった。

小黒:絵のテンションは最後まで高かったよね。

長谷川:そういう意味では理想的な終わり方でしたね。普通なら疲れるんですよ。「こんな大変な絵を描いていたら、もうヘトヘトだよ」っていうことになるんです。だけど、体力的な限界を興味でカバーするというか、やっぱり好きなことをしている時は、徹夜しても疲れないでしょ。そういう意味では、それぞれの欲求をを、うまく絵にぶつけられたんじゃないですかね。

小黒:描き下ろしの話に戻すけれど、『ウテナ』の描き下ろしは、テレビシリーズの中盤あたりから、ちょっとアートっぽい方向にいくようになったよね。そのあたりについてはどうなの?

長谷川:「ウテナならでは」というか、希少価値でありたかった。僕にとって、究極のテーマは「服を着ていても裸に見えるような色気」なんですが、サービス過剰なあまり思考停止してビジュアルにどうも関心が持てなくなった。その辺はウテナのテーマでもある「敢えて見せない、抑圧を加えることによる快楽の増幅」にも通じてますが。

小黒:いわゆるアニメっぽい絵の気持ちよさを追求した絵……つまり「アニメ度数」の高い絵じゃない方向性にいってみたいと。

長谷川:「アニメ度数」に関係なく、裏に別のニュアンスが感じられる絵にしたいですね。

小黒:アートっぽい絵って、いわゆる「アニメ度数」に関しては弱いわけだよね。だけど、アニメ絵の気持ちよさが、浮き彫りになるみたいなかたちにもっていってもらいたいと思うんだけど。

長谷川:わかります。アニメの現場を離れてイラストレーターをやるなら何やってもいいんだけど、この仕事をやるからには、そういう「アニメ度数」をどこかで考えておかないと。切り捨ててしまうわけには、いかないですからね。

小黒:それでは、今後、どんな絵を描いていきたいかという話でシメにしましょう。

:私は劇場版が本格的に動き出したら…シッポを見せたいですね(笑)。

長濱:シッポ?……ああ、本当はついてないシッポをね。

小黒:長濱さん、攻撃的だなあ。

長濱:一応ね。こういうことは言っておいた方がいいんですよ……。そうしたらホントに出してくれるんです。

長谷川:そうだね。林さんは自分からは、絶対にシッポを出してくれないと思う。

長濱:だから「ついてないだろう」と言い続けていれば、いつの日か「ありますよ、ほら、ここに」って言って出してくれるにちがいない。だから、言い続けないと(笑)。

:ひょっとしたら、すごい長いやつが出てくるかもしれないですね(笑)。

小黒:そんなことをして、この人がつぶれちゃったらどうするの。

長濱:林さんが?大丈夫ですよ。そんなヤワじゃないですよ。

:そう言われると……う~ん、嬉しいんだか、哀しいんだかわかんないですね。

小黒:そういう長濱さんは、どうですか?

長濱:「どんどん絵を描いていけば、なにか結果がでる」という方法よりも、1ランク上でなにかできるといいかな。

小黒:方法論変えるということ?

長濱:そうです。そういう形でできればいいなと思います。

小黒:かっこいいね。

長谷川:それで、いいと思うな。

小黒:長谷川君は?

長谷川:劇場版に関しては……、当面は林さんのシッポを出させるのに全力投球したいです。

:シッポのことは、忘れていいですよ(笑)。

長谷川:そのための劇場版です。

一同:(笑)。

:わかりました。期待していて下さい。ものすごいモノを……。

長濱:何もないのは、わかっている。

一同:(笑)。

小黒:劇場版はもうすぐ脚本が上がる予定です。

:あっ、楽しみですね。

長谷川:劇場版では、ストーリーが、かなりインパクトのあるものになりそうですから。絵の方も単純に脱がすだけでは、もう追っつかないってことになるでしょう。話のインパクトを凌駕するようなビジュアルを出さないと。……脱ぎ方そのものを変えたいですね。

小黒:脱ぎ方って、キャラじゃなくて、自分の?

長谷川:そうです。

小黒:テレビの『ウテナ』の終わり方って、毎週1本作っているからこそ生まれる勢いみたいなものがあったよね。映画版では、その週間ペースの勢いは出ないわけだから、それに代わる何かが生まれることに期待したいですね。

長濱:たしかに勢いだけじゃ難しいから、工夫しないといけませんね。

長谷川:勢いに代わる何かを見せられるように、スタッフ一同頑張っていきたいと思います。

(1998/3/28 ビーパパススタジオ)
 
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