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「絶対表現至上主義 アニメ版ウテナのつくり方」 幾原邦彦インタビュー
- 2007/12/22(Sat) -
幾原邦彦 (監督) インタビュー
美術出版社「コミッカーズ」 98年6月号より

――『少女革命ウテナ』は放送終了後もファンの間でのショックはまだまだ大きく、インターネットの情報によりますと、螺旋階段を見ると興奮したり、高島屋デパートの格子状のエレベーターでイッてしまったりとさまざまな症状が報告されています。

幾原:アハハ(苦笑)。

――ココでオレ的にぜひ原案&監督である幾原監督についに登場していただき、この際いろいろ語っていただきたい、と。

幾原:はい。

――ストレートにお訊ねしまして、あの、監督にとってキャラクターとは何なのですか?

幾原:なんだろう。ツールとか、そういうことですかね。

――なるほど。では監督にとってのツールとはいったい?

幾原:表現するためのものですよ。

――つまり、キャラクターとは表現のための道具であると。

幾原:正確に言うと、ツールには二つあります。まず第一にキャラクターとは《よりよいビジネスを導き出すためのツール》であるということ。そして僕にとっては《表現をするためのツール》であるということ。その二つの目的が絶えず『ウテナ』というキャラクターを中心にぶつかりあってる。
でもそのおかげで最終的にどちらに比重を置くべきかって葛藤が僕の中に生まれる。もちろんスタッフの中にも。その二つの目的の中で絶えず、なんてのかな、キャラクターが翻弄され続けるんだけど、まあ、それも楽しかったよね(笑)。

――ほほー、たとえばウテナをもっともっと《ベルサイユのばらのオスカル様》にすることも当然できたかもしれませんね。

幾原:ある意味で、そういうことをしたほうが《ビジネス》としてうまくいったかもしれないし、逆に大失敗したかもしれない。それはどっちとも言えないんだけど。
しかし僕の目的は、パロディーにして最大公約数的に認知させてやろうということではなくて、あくまで《表現》なんだよね。だって僕は企業家じゃなくてディレクターだから。でもそのキャラクターをどういうふうに視聴者に思わせたいかっていうと、それは単純にかっこいいヤツだと思わせたいという矛盾が……(笑)。まさか、かっこ悪いヤツとして認知してもらおうなんて企画が成立するはずないからね。
だからそういう意味では、やっぱり『ウテナ』は普通のキャラクターアニメとして成立したんだと思う。それが成功したのかどうかは今でも僕にもわからないけれど、僕には《表現する》ってことだけが快楽だとも言えるから。結局はディレクターだしね。たぶん、そのことを、《表現》に《快楽》が存在するということを、認知してほしかったと思うんだよ。『ウテナ』というキャラクターを通して。

――なるほど。

幾原:キャラクターを商品としてかっこよく提供するということよりも《表現》という行為そのものがかっこいいことであるということを認知してもらいたいためにキャラクターをツールとして使った……そこにかける比重が大きくなってたんじゃないかな。

――先生ッ、難しいですッ!

幾原:というかね、本当はキャラクターが完成したとこで僕の仕事は成立してたんだよ、たぶん。

――仕事はもう終わってる?

幾原:それ以上そういうことをやり続けると、僕、いらなくなるじゃん、ということですよ。

――よ、よくわかりませんッ!

幾原:たとえば以前『セーラームーン』の仕事をしたときは、あらかじめ武内直子さんによって作られた《素材》が先にあって、それを《演出》することによって自分のものにしていったんだけど、今回は違うんだよね。

――はい。全然違いますね。

幾原:今回は最初から全部作っていったわけだから。そこで僕が企業家だったら、もっと割り切れるんですけどね。

――何をですか?

幾原:だって企業家だったら、とにかく《表現》よりも《ビジネス》にしたほうがいいに決まってるじゃない。そういうことです。

――でもほら、今回ビーパパスを作るためには企業家的な努力もされたんではないですか?

幾原:あれは会社じゃないから。

――会社じゃないとすると、純粋なクリエーター集団なんだ!

幾原:そう。だから、僕には企業家の部分は……

――ないんですね!ただ表現者としてのみ……。

幾原:いや、多少はある(笑)。そりゃあ、企業家の部分だってなければ、こういう取材だって絶対受けないもの。

――そりゃ、そうですね。

幾原:だからやっぱり、絶えず《ビジネス》と《表現》という二つの価値がせめぎあってるんですよ。つまり、この場所、ビーパパス・スタジオもそういう場所なんです。絶えずその価値がせめぎあってる。だって、せめぎあいもなく、完全に《ビジネス》という価値だけを追求したいんなら、ここよりももっといい場所があるわけですよ。

――確かに。

幾原:でも、それでもここに居たい!という人がいたり(笑)、あるいは僕がここに居続けるという理由は、もしかすると僕たちが存在する、表現行為をするということにも価値がありえるかもしれない、と思ってるからこそのことで……だからこそ、二つの価値がせめぎあう場所や作品でなくては意味がない。
ビーパパスはそんな成立しえないような価値の中で、かろうじて成立してる場所であるし、『ウテナ』もそういう作品なんですよ。

――なるほど。

幾原:もちろん《ビジネス》としてもっとわかりやすいキャラクターの提示の仕方もあっただろうね。今回はそれをしないで、ちょっと肌触りの違う作品を作るってことを目指してみた。
当然のことながら、それは視聴者だけじゃなく、スタッフにもかなりのとまどいを与えたけど。でもまあ、そのとまどいの中でスタッフとガヤガヤやるのも嫌いじゃない。

――一人でやるよりみんなで作ったほうがいい作品が生まれる?

幾原:たまたまアニメーションが大勢のスタッフで作るメディアだったから、そのことを楽しめるように自分を訓練したということもあったと思う。作業が楽しめないとダメだってことも、経験値でなんとなくわかってきたところがあった。
もっとワンマンでやろうと思えばやれたかもしれないんだけど、そうしたら思考がどんどんマイナーになっていってしまったんじゃないかな。仮にもし僕が全部一人でやったとしても、自分の中でのせめぎあいは絶対あったと思うし。

――《ビジネス》としてキャラクターを考えたとすれば、ウテナのキャラ設定って難解なところがありますよね。その難しい部分が、監督の《表現》としてのこだわりなんですか?

幾原:そうとは言えないね。

――じゃ、それも意図的な《ビジネス》の部分なんですか?

幾原:ていうか、《表現》ということの価値を突き詰めていくと、そうならざるをえないということ。例えば一見ビジネスを無視した表現でも、面白かったら売れてしまうでしょってとこまでたどりつくのが、本当の意味での《表現》の成功だと思うから。

――コンセプチュアルなものより、純粋に楽しめる、ウケる作品のほうが優れた《表現》だと。

幾原:うん。でもそういう楽しみかたの訓練とか経験値は、視聴者全般にあまりないだろうけど。

――せめぎあいの話で言えば、実はウテナよりアンシーのほうが、キャラクターとしてせめぎあってませんか?

幾原:えッ、そうなの? なんで?

――だってアンシーがもっと弱々しくて「あたしダメですぅー」みたいな子だったらキャラとしての人気はいっそう……。

幾原:型にハマるねー。ビジネスとして分かりやすい(笑)。

――アニメファンがどんなキャラが好みとかは、これまでのアニメの歴史を振り返ればバレバレですから。意外と単純(笑)。

幾原:そもそもアニメが単純なものなんですよ。誰もものすごい複雑な描写や微妙な味わいを求めてアニメを観てるわけじゃない。

――そうなんですか。

幾原:そうでしょう。シンプルだからこそ観たいだけ。だから、そのシンプル性を突き詰めると逆に浮き立つ《表現》もあると。

――はい。

幾原:別に『サザエさん』が究極じゃないかなんて言ってるわけじゃなくて、シンプルだからこそ、浮き立ってわかりやすくなる部分があるっていうのかな。
たとえば、俳優を使って実写で『ウテナ』をやってもそれほど話題にはなりえないと思う。『ウテナ』はあくまでアニメーションという道具を使っているから、パラドックスな表現行為が一種の《快楽》としてひじょうにわかりやすくなっている。
アニメーションという作業は《単純化》であり、細かいものを切り捨てて情報を整理する表現なんだけど、イコール《象徴性》も高い。単純化したものとそうでないものとどっちがクルか、セクシュアリティーを感じるかだよね。僕はシンプルなほうがドキドキする。

――監督の「シンプル・イズ・ザ・ベスト」的な表現は逆に知的な部分を刺激する……。

幾原:ただやっぱりこれって日本だけの特殊な現象ですね。アメリカはディズニーだから。たとえば海外だと本当に表現至上主義のアニメーションっていうのは、もうアンダーグラウンドに向かわざるをえないから。
それ以外の方法としては、もうディズニーとか最大公約数向けの作品、リアリズムしかない。だとすれば日本のアニメーションというのは、そうとう特異な場所にある。

――たとえば、僕は今までアンシーの洋服のひだひだとか、肩についてるアクセサリーとかって全部監督の趣味だと思ってたんですけど、本当はあくまで『ウテナ』という作品をヒットさせるための計算というかコーディネートなんですか?

幾原:その趣味っていうのも、ときめきとかセクシュアリティーが僕の中で発生したからそうした……という観点で考えると、それはもう商売ですよ。ときめくんだから売れるだろうと(笑)。

――女の子に男の格好をさせるのも売れるだろうと……。

幾原:当然です。もしそれがなかったら別に普通の格好でいいじゃない。《ビジネス》と《表現》でまったく分離はできない。どういう形でキャラを売るかってことも実は《表現》の一環だと居直らないと。

――別々に見えて本当はつながっている部分もある……。

幾原:だろうね。

――たとえば、ストーリー的に見ると近親相姦とか抗議が来そうなネタ、あったじゃないですか。あれは《表現》として作りたかったことでしょう? それともあれも《戦略》だったの?

幾原:……ごめん、戦略(笑)。

――うひゃーッ、ホントに?

幾原:僕がそこんとこ間違えてどうすんの(笑)。ホントはこういうこと言っちゃいけないんだろうけど《アニメだからやってる》ことにすぎないよ。さっきから言ってるように(笑)。

――アニメってシンプルに見えて実は複雑じゃないですかー。

幾原:いや、そういう近親相姦のようなネタをね、本気でやってもいいんですよ。だけど、それだけで価値になりえる時代はとっくに終わってると僕は思う。つまり、このコミケ時代にそんなものはもう当たり前だと。

――しかし現実にはクライマックス・シーンでかなりショックを受けたり、最終回ではそれが単にセルの絵に声をアテただけという事実をすっかり忘れて涙を流してしまったという人がいる……でも、それは全部仕事としてのテクニックなんですか?

幾原:泣かせることは意識しましたね。アニメは見せ物だから。

――『タイタニック』でもディカプリオが死ねば、世界中の女の子がどわーっと涙を流すと。

幾原:うん、あれも見せ物だから、ディカプリオは死ぬ(笑)。

――じゃあ、監督が『ウテナ』で、ここはどうしてもやりたかった俺の表現だぜ! どんなもんだ! やっちまったよっていう場所というのはどこなんですか?

幾原:突出してどうこうというのはないですね。

――んがんぐッ!ないッ?

幾原:《人と人との関係》については意識したかもしれない。わりと最初からね。そこが唯一とは思わないけど《ビジネス》と《表現》っていう自分のやりたいことのパワーバランスが、うまく噛み合ったところじゃないかな。
つまり、女の子同士のアレだね(笑)。……その美少女が二人いてレズ的な関係になるという(笑)。しかも一見普通のキャラクターアニメのふりをして、何とゴールデンタイムで堂々と放映してる(笑)。そういうことをやりたいと思う馬鹿は他にいないだろうと。けど、僕はそれを一番最初に、一発目にやるということが、ひじょうに重要だと思ったんで。

――今後のアニメ界にもいろいろと影響を与えるでしょう。

幾原:もっと俗な言い方をしちゃうと、一番最初のものにしか価値はないんですよ。さっきも言ったけど、レズだとか何だとかいうものをもっと真剣にやってもいいんだけど、そういうこと自体はコミケでさんざん行われてきたことですよね。
それがホントに珍しかった時代っていうのはとっくに終わってるんだけど、最大公約数的なテレビアニメの中で、しかもキャラクターアニメとして、それを直球ど真ん中のストレートのゴールデンタイムの時間にやるということは面白いし、価値がある。

――普通ビビリますよね。抗議も含めて世間の反応とか……。

幾原:それも踏まえてやってました。スキャンダラスな部分も面白いと(笑)。コミケでは全然珍しいことじゃない。ただしゴールデンタイムってことにおいてはひじょうに面白い。ようするに家庭のテレビに映った段階で、ほのぼのアニメと『ウテナ』とどっちを見るかって比較検討されるってことだから。

――つまり『少女革命ウテナ』の最大のライバルは『サザエさん』系アニメだったと……(笑)。ミッキーじゃないけど僕もメモさせていただきます。

幾原:チャンネルを変えればオモテではあんなことをやってて、こっちではこんなことをやってる、と。

――うはうはうはは(笑)。

幾原:そういうのは面白い。つまりスキャンダラスであることが、《ビジネス》として成立しながらも、僕の《表現者》としての《快楽》を満足させてくれたということ……パワーバランスがかみ合ってるっていうか。
二人の少女の性の関係性の話が、商業的にもクリエイティヴな面でも分かりやすい、だから作品として成立したっていうか。

――《二人の人間の性と関係性の話》という幾原監督の狙いが、ビーパパススタッフの共同体全体に認知されるということも重要だと思うんですが……。

幾原:まあ、気楽にやっていきます(笑)。
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