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「革命の君主」 幾原邦彦インタビュー
- 2008/07/29(Tue) -
幾原邦彦(監督) インタビュー
ソニー・マガジンズ 「薔薇の全貌」 袋とじインタビューより
――企画から放送終了まで丸4年、『ウテナ』は幾原さんを主導に動いているわけですよね。

幾原:そうだね。

――テレビ版ではやりたいことはやり切ったという感じですか。

幾原:うーん、7割ぐらいは…。いつもこんなものだけどね。

――ご自身のプロジェクトを終えた感動なんかはなかったんですか?

幾原:別に(笑)。「長い仕事を終えたなー」とか。
まぁ、仕事のいっかんなのでね、まわりがイリュージョンで思っている程完全燃焼なんてないですよ。大リーグボールを投げた星 飛雄馬がパキッていっちゃったような。スゴイ何かなんてないです。あしたのジョーにもなってない。もう、フツウ(笑)。

――では、真っ先に思い出せる苦労点などは?

幾原:完全オリジナル作品ということで、コマーシャルをやらなきゃいけない義務があったんで。そういうところが作業的にしんどかったなぁ、と…。通常だとスポンサーがついていて、宣伝してくれる。著名な原作物であれば、勝手にパブリシティが動くもんだし。
今回は、そういうのが全然なかったんで…。自分で何とかしていかないと、どんどんマイナーなものになってっちゃうから。だから、まず作品を意図的にコマーシャルっぽいものにしていかないといけなかった。

――その要素は、作品のどのあたりに映し出されているのですか?

幾原:全体的に。とにかく、パッと見で解りやすく作ろうと。キャラも音楽もポピュラーな感じに。まぁ、マニアックにはいくらでもやれるからね。その方がラクだし。
そこが(作品をポピュラーなものとしてプレゼンテーションするということが)自分の義務になっちゃったのがしんどかった。『ウテナ』以前の仕事の進め方って、その逆で、自分が率先して暴走してたから(笑)。

――幾原さんが辺りに目を光らせて、軌道修正をしていかなければいけなかった?

幾原:そう、まわりが思っている程好き勝手にはやってないよ。

――ここまでやりたいのにブレーキをかけなきゃいけない、というのは作り手として辛いですね。

幾原:だから、先程の言ったことに繋がるんだよ。やりたいことがやれたのは7割ぐらいとゆーやつに。

――『ウテナ』の素材である絵や音楽を決定し、集めたのは幾原さんなんですか?

幾原:まぁ、そうだね。とにかく元が無い作品だからさ、何かと連動しているわけでもないし。だからどうすればいいのかって考えて。で、思いついたのが目立つ異物感っていうやつなんだよね。J.A.シーザーのような特殊な音楽と、さいとうちほのような完全ポピュラリティのある王道少女まんがをぶつけてみる。
そういう異物感を意図的に作り、コマーシャルのネタにした。だから、個人的な趣味でお願いしたという部分もあるし、計算していたっていう部分もある。

――『ウテナ』はカルトなアニメだと言われていますが、本質はそうではないんですね。

幾原:観た人がどう思うかは勝手だから。そうだなぁ、こういう題材で、こういう様なストーリーをやったら、世間がそう言うのは間違いないと思っていたから。普通の人が引っ掛かるとまではいかなくても、パっと観たときにマイナーな作品に見えない様には気をつけていたな。

――不条理と言われるその奥は、実は一般を巻き込むことも考えていたんですね。

幾原:もともと、そういうのが好きなんですよ。コマーシャルっぽい活動そのものが…。自分で言うのも何だけど、他のディレクターさんって、わりとこういう考え嫌うでしょ。たしかにコマーシャルはしんどい作業ではあるけれど、その反面、自分はこういう(コマーシャル的な作品)のって案外抵抗なくやれる。逆に全く「コマーシャルやらないでいい」って言われたら不安になるね。
「そんなマイナーなもの作っちゃっていいのかな」って。

――そこを考慮していながらも、監督色が強く押し出されている作品だと思うのですが。やはり登場人物やストーリー全体に、ご自身が反映されていたりするんですか?

幾原:キャラは全員、どっか断片的に自分です。じゃないとやれないよ。設定なんかも自分とかぶってないと作れない。ある部分を肥大化、拡大化、誇張させてストーリーにしてる。だからどっかしら自分が入っちゃってるよ。
でもまんがだからこれは。見せ物だからね。ウソで作っている部分も相当あるから。理想とかそういうものがごっちゃに入っているから。自分そのものではないよ。最初から最後までそんな感じだよ。

――物語の最後はハッピーエンドだったのでしょうか?

幾原:うん。アンシーがウテナを追っかけていくということが、そうなんじゃないの。外に出る…てことを描きたかったから。

――それはキャラに重ねる断片的な自分なんですか?

幾原:うーん、きっとそうなんじゃないの。なんだかんだ言っても、僕自身まだオコチャマ(お子様)だから。
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